劇場公開日 2023年6月9日

「ラブストーリーではなく、親子の物語として観れば悪くない」リトル・マーメイド おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ラブストーリーではなく、親子の物語として観れば悪くない

2023年6月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

予告を観てもそそられず、スルーしようかと思いましたが、一応ディズニー作品ということで鑑賞してきました。

ストーリーは、海王トリトンの娘・アリエルが、陸の世界に憧れ、偶然見かけたエリック王子に恋をして、父の言いつけに背き、魔女アースラの魔法で声と引き換えに足を手に入れ、エリックに近づき、二人の思いが通じ合いかけたところで、アースラの企みにより引き裂かれるが、アリエルは強い覚悟でアースラに挑むというもの。

世界的に有名なアニメ作品の方は未鑑賞なので、そちらとは比較できませんが、誰もが知る「人魚姫」のわかりやすいストーリーがベースなので、安心して観ていられます。コメディリリーフとして、カニのセバスチャン、鳥のスカットル、魚のフランダーらもいい仕事をしています。

映像的には海中シーンが圧巻で、序盤の映像は見惚れてしまいます。今回は時間の兼ね合いでIMAXしか選べず、しかたなくそれで鑑賞したのですが、結果的には正解でした。視界いっぱいに広がる海中は、リアリティよりも美しさを優先したような印象で、そこをゆったりとしたカメラワークで深く深く潜行していくシーンは、今にも吸い込まれるようでした。

とはいえ、内容的にはあまり心動かされずといった感じです。そもそもアリエルは、エリック王子にいつ惚れたの? どこに惚れたの? 網で引き上げた漁師はなぜ城に連れて行ったの? そしてなぜすぐに歓待されるの? …と、なんだか納得のいかない流れでイマイチ乗れませんでした。おまけに、表情に乏しいせいかヒロインにあまり魅力が感じられないし、王子にいたっては、命の恩人を探させながらもすぐに他の女性に目移りするってどうなの? …とまあ、ラブストーリーとしては全く響かなかったです。

そして極めつきは歌の多さ!ディズニー作品がミュージカル仕立てなのは承知していますが、中でも本作は多かったです。耐性のない自分は、眠気スイッチオンで、長いまばたきが増え、字幕もいくつか見落としてしまいました。そのせいで、作品のよさを見誤っていたならごめんなさい。

そんな感じで、久しぶりにハズレディズニーかと思いきや、終盤で一気に持ち直し!アースラの謀略にはまり、娘のために犠牲になるトリトン、そして父娘の和解。アースラとの決戦後、岩場から城を眺めるアリエルの寂しげな背中を見つめ、娘の幸せを願って心を決めるトリトンの姿が沁みます。ラストで、二人の門出を見送る彼の姿がまたイイ!父娘の絆の物語として観ると、本当によい作品でした。なにげにエリックの背中を押すグリムスビーも、父親的存在として印象的でした。

本作は、声が出せないアリエルがエリックに愛を伝えるというストーリーを表面的に描きながら、声を上げても聞く耳を持たないトリトンやセリーナの姿を対比的に描き、思いを届けること・受け取ることの大切さ、難しさを訴えているように感じました。そんなテーマを感じ、「やはりディズニーは奥深い」と一人勝手に感心しています。

主演はハリー・ベイリーで、圧巻の歌声を披露しています。脇を固めるのは、ジョナ・ハウアー=キング、ハビエル・バルデム、メリッサ・マッカーシーら。中でも、アースラ役のメリッサ・マッカーシーの怪演っぷりが印象的です。

余談ですが、今回の鑑賞はなかなかの災難に遭いました。後ろの席に3組の外国人母子が座っていたのですが、上映中にずっと話し声が聞こえてきて、なかなか映画に集中できませんでした。それどころか、紙くずをぶつけられるわ、ペットボトルを投げ込まれるわで、散々でした。小学校就学前ぐらいの子たちでしたが、彼らには本作はつまらなかったようです。やりたい放題の子どもたちをたしなめるお母さんたちも、さぞや恐縮していたことでしょう。トリトンやセリーナではないですが、子育ては大変ですねー。

おじゃる