劇場公開日 2023年11月10日

「常識・既成概念で差別する「普通の人々」」正欲 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5常識・既成概念で差別する「普通の人々」

2023年11月21日
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原作を読んでないからあくまでも映画からの印象ですが。
ガッキーと磯村勇斗くんの「水フェチ」は、ある種の性的マイノリティであり、と同時に誰にも理解されない孤独に悩む人間。
彼らが、自分を理解してくれる人と共にいたいという感覚を表現したものとして、『流浪の月』に近い内容でありました。
ただ、『流浪~』と違うのは、主人公が被害者・容疑者側(ガッキーたち)ではなく、吾郎ちゃん演じる検事の寺井なんですよね(クレジットの順番的に)。

この検事を通して、常識・既成概念と言われる一般性にがんじがらめになっていることに自覚がなく、自分の考えと違うもの全てを「嘘」「まやかし」と切り捨て、理解しようとしない、「普通」の人間を描くことが主眼なのかと。

「普通」って実は、最も他人を理解しようとしない概念と思考法ではないか?
「他人の自分との違いを知ろうともしない」態度を、「常識」「普通」「良識」だとするなら、家族という一番近い存在すら理解できず、失うことになる。
この「普通」の残酷さ、無能さ、許容力の無さにより、世の中の不幸を招いているのではないかという提示をしているように思えました。
さらに踏み込んで、(ベストセラーとして話題になったときに目に入った書評で触れていた)容疑段階で佳道(磯村勇斗)を関係のないネットやマスコミが叩く、検事側に立った「正義の娯楽」をする人の悪意までを描くかといえば、それはなく。

たぶん、俳優陣からいって、マイルドな表現にしつつ、その「人の愚かさ」を一人に託したのかなと。
結果……

映画賞狙いっぽくて、エンタメからは遠い感じの"文芸作品"臭が強かった印象。
海外、特にフランスとかには受けそう。

付け加えると、不機嫌で無愛想なキャラなので、起用した意味がないだろう、どうなるんだろうかと思いきや、後半で横浜に移ってからはもうガッキーの美しさ全開。
その点は安心して観にいってもらえればと。

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コージィ日本犬