「朝井リョウ原作映画の魅力」正欲 ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
朝井リョウ原作映画の魅力
まずキャスティングが素晴らしい。
そして全てのキャストが最高のパフォーマンスをしていて久しぶりに邦画を観ていて感動した。
原作は読了済み。朝井リョウの小説では「何者」が1番グッときていて本作「正欲」はタイトルは上手いこと考えたなーと感心しつつも予想の斜め上を行く内容で、心に刺さるまではいかなかった。
水フェチはあくまでもメタファーで、本当はもっと犯罪に繋がる性癖でもよかったかと思うが、ここらへんが限界でしょう。
実写化となった本作では原作のオムニバステイストを踏襲しつつも順番を入れ替えることでクライマックスの夏月と啓喜の対峙がより際立ち、そして鉄の扉がガッチャンと重々しく閉じるように終幕する演出が素晴らしかった。全体的に照明も暗いし、ひたすら重いんです笑 この映画。
ただしこの重さがあるからこそ、ラストの夏月の台詞に救われ、啓喜の孤独感がより際立ったと思います。
原作でも見せ場だった大也にまさかの反撃をする八重子のシーンで、八重子を演じた東野綾香さんは圧巻だった。本作が映画初出演とは思えない存在感で今後が非常に楽しみである。日本アカデミー新人賞確実でしょう。(日本アカデミー賞は特にチェックしていませんが笑)
監督は面食いなのか、啓喜、夏月、佳道、大也を演じたキャストは原作を読みながら想像していた顔より数段良い笑 だからこそスクリーン映えするのかな。夏月のウザい同僚との対決シーンなど、原作から大きく削ったところもあります。しかしここはクライマックスの夏月VS啓喜をしっかりみせるための的確なバランスだったと思う。
長い間の使い方や自然な台詞など心地よい演出だった。やたらと感情叫んだり、説明台詞の連打など、「ゴジラ-1.0」等で見受けられる日本ドラマ仕込みのクサい演技と演出が本作では全くない!笑 これぞ映画の時間!
今年の邦画ではトップクラスに好きです。
朝井リョウ原作映画が今のところ全部"当たり"という素晴らしいユニバースに私は生きている。売れないと世間的には(普通は)"当たり"とは言わないかもしれませんが。
あとは渡辺大知さんのショッピングモールで遭遇したくない陽キャ幼馴染感ハンパなかったです笑
啓喜の食事がカレーライスやオムライスなどやたらと子供っぽい食事なのは映画だけの演出だと思うが、どういった意図なんだろう。(嫌いな人がいない、みんな大好きな間違いないメニューを食べている=普通であろうとする啓喜そのものみたいな?)
啓喜への食事が簡単に済むものになっている(焼き魚+野菜+味噌汁+ご飯のザ ・和食セット→オムライス→レトルトカレー)ことで、奥さんの気持ちが冷めていっていることを暗示しているという解釈もあるそうです