「ノットエレガント」ヒトラーのための虐殺会議 ゆーさんの映画レビュー(感想・評価)
ノットエレガント
「関心領域」をみて、アウシュビッツのことなどを調べている中でヴァンゼー会議を知り、この映画をみることにしました。
会議参加者全員がユダヤ人を排除することが自分たちに課せられた使命だと認識している。その共通認識におぞましさを感じましたが、すでにドイツ国内でユダヤ人迫害政策が始まってしばらく経っているのでしょうね。
その上で、対象とするのはドイツ国内だけでなく全ヨーロッパのユダヤ人1100万人であることの確認がされる。いくつかの国にはもう承諾もとっていると。これは初めて知った事柄でした。その当時のドイツに意見できない国の事情もあったでしょうが、宗教対立や経済的な妬みなどに起因するユダヤ嫌悪があちこちに存在していたことも想像されました。
最終解決のための具体的な方法を説明されるシーンで、どなたかがエレガントと口にするシーンがあります。ユダヤ人の遺体をユダヤ人に運ばせることに対するコメントです。こらをエレガントと言ってしまえる精神が恐ろしい。精神的苦痛というキーワードも、ドイツ人にむけてのものであって、ユダヤ人に向けたものは全くないんですよね。労働させるなら住居と食糧が必要というセリフはあっても、あくまで捕虜に対する扱いのような口ぶりで、人道的な観点からではない。そう決まっているから、と言わんばかり。
会議そのものは冷静に進行していき、自分が職場で遭遇するぐだぐだ会議と比べて羨ましいくらいスマートな進行なのに、内容の恐ろしさといったら。でもきっと彼らもそれが正しいと思い込んでいて、誇りすら抱いている。
誰もがその中心人物ではなくても、その一端を担うことになる可能性はある。
自分はどうしていくのか、考えさせられる。