福田村事件のレビュー・感想・評価
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今まで観てきた映画の中で最も濃厚でした
事実を元にしたフィクションではあるものの、人間の原罪を深く浮き彫りにした、大変示唆深い映画でした。
今まで観てきた映画の中で最も濃厚な内容でしたので、見終わったあとの余韻が深く、現実の世界への順応するのに時間がかかります。
「人間って何なのか」に関心がある方は、必見です。
日本映画の金字塔
日本映画の新たな金字塔が生まれた。差別を正面から捉えたテーマ、村の暮らしを赤裸々に描写し、その後の虐殺に絡めたストーリー、どれも良く練られている。
社会の頂点としての天皇、最下層の部落民、朝鮮人の図式、言わば日本社会のタブーに触れている。
この事件の中には社会の同調圧力を操り世論を操作し、国民を戦争に駆り出し、取返しのつかない事態を招いた戦前の政治、軍事状況の原型がある。
冒頭、主人公は川を渡り福田村に帰る。ラストに霞のかかった川面をゆっくりと走る小舟に乗り、何事もなかったかのように、村から出ていく。その間に讃岐の薬売り達は川を渡り虐殺の被害者になった。主人公は朝鮮半島の虐殺事件に意図せず加担したことを言い出せず苦しんだように、村での出来事を喋らないだろう。村人たちは、村長も在郷軍人達も、人知れず沈黙する。虐殺を取材した新聞記者の記事は、決して新聞に掲載されることはない。虐殺を止めるヒーローはどこにもいなかった。
この事件から100年経過し、それを未だに検証せずに見て見ぬふりをする政府は何を恐れているのだろうか。
近年で最高の秀作です!
映画「福田村事件」、とても秀逸な映画でした。
関東大震災云々をテーマにした方が一般的には発信しやすいし、記事としても取り上げやすかったんでしょうが、いやいや、それどころではない内容の深さに驚きました。
100年前の未成熟な民主主義での大災害時という状況だからでなく、日々の生活での悩み・辛さがおかしな形で吹き出すことがある怖さや、群集心理、異質なものの排除意識、朝鮮人・部落差別と、日本人の誰もが今でも充分に起こす可能性のあることをわかりやすく表現した映画だと感じました。
加えて、一流の俳優陣による素晴らしい演技や、男女の駆け引きといった人間模様もあり、映画としての面白さもふんだんにあることも特筆すべきと思います。個人的には博士のハマり役には驚きました!
1人でも多くの日本人、特に、「にっぽん大好き❤日本人」にはぜひ見て欲しいですね。
単に「見るべし」ではなかなか見てくれないだろうから、文部省推薦とか、なんとか賞とかがあればそういう人に見てもらえそうな気がします。
ぜひ多くの賞🏆をとることを期待します。
日本の縮図のような村。
千葉県福田村。武器を握りしめた村人達に取り囲まれる香川から来た15人の行商人。ちょうど100年前の日本で実際に起きた悲惨な事件を描く重厚な1本。
集団心理による狂気。その果ての蛮行。抗えない異様な空気感。「朝鮮人ならええんか」なんて重い一言だろう。愛国心、そして戦争。不安定な世の中に追い打ちをかける関東大震災。
そんな中、短時間だけど民主化を望む思想家の姿が描かれていて、当時の価値観を象徴する重要なシーンとなっている。
混乱に乗じて大日本帝国の障害になり得る危険因子は根こそぎ排除する。これが日本という国の本質なのだろうか。そんなはずはないと思いながらも、もし自分があの村の一員だったらと想像すると途端に気が滅入る。
実に見事な配役で、特に水道橋博士が不思議な説得力があって良かった。残酷な映画だけど日本人として観て感じることは多いと思う。
今に警鐘を鳴らす怪作
人は正義にも悪にもなりえるし更にいえば正義という甘美な言葉のもとなら人をも殺してしまう。
それは100年前であれ現在であれ人間の本質は変わらない。
在郷軍人の水道橋博士は悪役を演じていましたが、事件後の慟哭のシーンで自分はも泣いてしまった。「村を守る為だったんだ」と。
この映画には多くの登場人物が居るけど、例えば行商団には朝鮮人差別意識を持ってるいる者もいます。
行商団の親方(永山瑛太)は自分達が部落出身で差別されていることと照らして朝鮮人に対して寛容な意識を持っている。ただそのことが悲劇の引き金を引いてしまうなど、人物ごとに細かな描写があり見事な群像劇に仕上がってると思う。
今の日本人が見るべき必見の映画かと。
空気感と同調圧力に弱い日本人を象徴するような事件
実際に起きた事件をもとに作られたとのことから若干の内容を調べてから観に行きました。※ポスターから何故か八つ墓村のような内容を想像してしまったが、勿論ホラーではない。
事件が起こるまで、長い時間をかけて登場人物を丁寧に描けているので、それぞれのキャラクターに感情移入できました。事件は突然起きるわけではないが緊張感がどんどん加速していきました。
こんな酷い事件が実際にあったのか、という感情と、空気感と同調圧力に弱い日本人を象徴するような事件であると感じました。今日の日常でさえも大なり小なりこのような「日本人の怖さ」を感じた事は誰にでもあると思う。
加害者側、被害者側、双方の立場に立って、もし自分がその場にいたらどのような行動をとればよいか、凄く考えさせられました。
え?!演じてるの?
突き付けられる事実が心を抉る
世の中で一番恐ろしいのは
今まで4000本近く観てきたと思うが記憶にある限りこんな恐ろしい映画は初めて観た。
「シャイニング」も「ポゼッション」も「女優霊」も確かに怖い。しかし「福田村事件」は、何と言うかその刺さる深度が全く違う。
「黒い雨」がまあ近いのかもしれないが、しかし原爆は我々がほぼお目にかかる事がないのに対して、「人間」は周りにいくらでもいる。なんなら我々は彼らの中に身を投じることでしか生きられない。
そこに「福田村事件」の怖さの逃れられない切迫感がある。
詳しくは言わないが後半30分観たあとは放心状態になった。30分経っだが今も携帯が上手く叩けない。
今年のベストテン、というか映画史上に残る衝撃作だと思う。
しかしこの映画をいわゆる日本の映画界はスルーするだろう。日本アカデミー賞でも単なるキワモノ扱いされて終わると思われる。悲しいかなそれが今の日本の正義感や矜持を象徴している。
戦前の日本社会が抱えていた闇
ようやく観ることができました。公開当初から多くの人に勧められていました。ドキュメンタリーであればすぐにも観に行ったのですが、劇映画となるとつい足が重くなります。あまりに目を背けたくなる歴史的な事実なので、エキセントリックな表現になると、原作者や監督の意図しない方向に行きがちです。どのような形であの事件を描くのか、冷静に観ようと思い、鑑賞しました。
なかなか一言では表現できませんが、戦前の日本社会が抱えていた闇(朝鮮人差別はいうまでもなく、被差別部落の問題、経済的な格差、農村社会の封建的体質、日本のデモクラシーの脆弱性、出征兵士やその遺族に与えるダメージ、権利に忖度するマスコミなど)を、見事に描いていました。冷静に、今日本はどうなのか、同じような過ちを起こさないと言えるのかというと、必ずしも否定できない自分がここにいます。
残虐なシーンもありますが、そこは抑制的に描き、一人ひとりに感情移入しすぎないように演出されています。私と同様な気持ちで躊躇している方も、安心して是非ご高覧あれ。
昔の話だと断ずる事のできない、おぞましい史実
フェイクニュース
自分の弱さは誰のせいでもない
もし記者が書かなかったら、もし身分確認がさらに遅れたら。もし関東大震災が起きなかったら。この事件は伝われないままに終わる。事件が怖いのではなく、また同じようなことが起きるほうが怖い。
生活の為に必死な行商団、権力がない村長、事件を防げたが記事を書かせてくれなかった記者、止めることができなかった村人、国を守る為、村を守る為に戦う軍人、警戒命令を出した国、その場で確認できなかった、周りに衝動を伝達した女性。この事件は誰の責任なのか。誰の責任でもなく、人の弱さによって起きた事件。冷静になろうともっと勇気なある人が増えればもしかしたら事件が起きていないかもしれない。
福田村については前半に書かれているが、このような集団心理になった理由がはっきり見えていない。行商団の描写は詳しく書かれたと思います。
クラウドファンディングによってたくさんの方の支援によってできた映画であり、一人でも多くの方に知ってもらえればと思います。エンドロールに一人一人の名前があったのは良かったです。みんな一人一人にしっかり名前があります。
衝撃!!
島国根性まっしぐら。
明治、大正、昭和の歴史を考えさせられる作品でした
福岡市で森達也監督と田中麗奈さんの舞台挨拶付きで観てきました。
私は東京都本所の生まれで、父が1歳の時に関東大震災があり鉄橋を渡って逃げたと聞きいています。3年前に父が亡くなり、父が生まれた大正時代を調べる機会が増えてきた中で映画「福田村事件」を知りました。
福田村事件の10日後に大杉栄、伊藤野枝の虐殺があり、伊藤野枝の出身地、福岡市西区での100年プロジェクトに9月15日参加してきました。また、部落解放運動の水平社が設立100周年として2022年に制作した映画「破戒」を9月14日に観てきましたので、明治、大正、昭和の歴史を考える日々です。
1903〜1904年日露戦争、1910年韓国併合、1917年ロシア革命、1919年大韓民国三一独立運動、1923年関東大震災という歴史の流れを知っていなければ、この映画は理解出来ませんし、その後の昭和、平成、令和に続く歴史の理解と、私たちの将来の行動を考える時に必要な情報が福田村事件には含まれていると思います。
舞台挨拶の後で制作の裏話を聞き、映画の印象がだいぶ変わりました。役作りに長い時間をかけること、監督の演出を含むこだわり、企画を持ち込むが殆ど断られたこと等、色々聞くことが出来てとても楽しい時間でした。素晴らしい映画、本当にありがとうございました。
100年の時を超え人は変わったか
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