劇場公開日 2023年9月1日

「「村を守る」って?」福田村事件 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「村を守る」って?

2023年12月2日
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水道橋博士演じる長谷川秀吉が、「村を守りたかっただけ」と言いながら、妻に抱きかかえられて涙するシーンのおぞましさに震えた。豊原功補演じるデモクラシーを語る村長が、「これからも村で生きていかなくては」と語りながら、見て見ぬふりをした自分を肯定するシーンでも吐きそうになった。それはきっと、自分の奥底にも同様の思いがあることへの嫌悪からだろう。
瑛太演じる沼田新助の「朝鮮人なら殺していいのか」という投げかけの普遍性と共に、水平社宣言の力強さが光っていた。
制作側の熱意とメッセージに共感しつつも、個人的に不要ではと感じるシーンや、説明調のセリフで冷めてしまう所もあって、3.5。

sow_miya
トミーさんのコメント
2024年2月21日

共感ありがとうございます。
制作開始の経緯、メッセージ性は無論高いのでしょうが、ドキュメンタリー化困難な面からエンタメ要素が多くなったのは間違ってない流れだったと思います。その部分から皮肉な事に監督vs脚本家に進展し、映画芸術ではベスト2に留まるという興味深過ぎる結果になりましたね。ちょっと観客の手を離れてしまった感ありますけど・・

トミー
sow_miyaさんのコメント
2024年2月5日

琥珀糖さんにコメントをいただいたので、レビューにもう少し書き加えたいと思います。
最近、阿久澤麻理子さんの書いた「差別する人の研究: 変容する部落差別と現代のレイシズム」という本を読みました。
阿久澤さんの主張は明快で、「差別はする人(側)の問題」「差別はする人(側)の恣意なので、勝手に作り変えられる」「差別の現れ方も、それを正当化する理由や言説も、する人(側)によって時代とともに変容させられてきた」と指摘しています。
この映画で描かれていた福田村事件も、全てする人(側)の思惑から起きていました。
しかしそれは、ハンセン病患者を手玉に取る瑛太(被差別部落民)という形でも描かれていた通り、絶対的な差別者と被差別者に分けられるというものではなく、状況やその人の生育環境などの要因によって、誰もが差別者になり、被差別者にもなり得るということが前提です。「私は差別なんかしてません」ではなく「私も差別をしてしまう可能性が高い」という、まずこのことを自分は受け入れなくてはいけないと思っています。
直接的な差別的言動を、面と向かってする人は減っているかもしれませんが、在日特権とか、同和利権とかいう言い方で、ネット上でヘイト表現が拡散されている状況もあり、あえてそうしたことを口にする政治家さえいます。それは、福田村事件と同様なことが今も起き得る危険性があるということに他ならないと感じ、そうした意味で、今この映画が作られた意味は大きいと思っています。

sow_miya
琥珀糖さんのコメント
2024年2月3日

共感ありがとうございます。

説明台詞とか、妻に慰められる水道橋博士、
デモクラシーと声高に言いつつ何も行動に移せない村長。
おっしゃる通りだと思います。

私は内容が重くて暗いのに、面白いエンタメ映画だと
思いました。
観る前はすごく気が重かったんですよ。
観たら(不謹慎ですけれど)面白く飽きることなかったです。
水平社宣言。
北海道に生まれると「部落」ですか?
被差別部落民とか、本当に実感が湧きません。
それで呑気なんでしょうかね。

琥珀糖