「「あなたはいつもみているだけなの?」」福田村事件 hyvaayota26さんの映画レビュー(感想・評価)
「あなたはいつもみているだけなの?」
137分、監督は森達也、めんどくさがってたけどしぶしぶ観に行きました。やだー、おもしろいじゃない。長さは感じませんでした。思想を演説してるような映画を想像してたんだけど、違った。ちゃんと映画だ!
何かのインタビューで森監督はエロ要素を入れたくなかったけど強く言えず後悔しているというようなことを言っていた。なに言ってるんだ、エロがなかったら出来事であって、映画にはならないじゃないか。
村人たちに交錯する、情念の発露の結果が惨劇に結びついているのだと思う。そこを丁寧に書いていたのがよかった。それぞれエピソードとして面白かったし。義父に胸押しつけるのは笑った。
女性にいろいろ託しすぎな気はするものの、みんな個性があり、各々の思いがあり、複雑さを想像させるのがとても良かった。田舎=女性=他者って感じ。
善良な人たちが群衆心理で酷いことを…という触れ込みだが、「善良な村人」など一人もいない。ずるかったり、弱かったりする人たちがいる。
人権派の村長が惨劇の目の前でなにもできなかったり、「上がそうしろと言ったからだ」と自らの罪を引き受けない姿こそが本質だと思った。
守ろうと声を上げた人たちが救いだし、きちんとやるべきこと(=声を上げること、みてるだけでいないこと)も提示しているのが誠実だと思った。たとえ無力だったとしても。ちゃんと応えてくれた人もいたし。
有名な俳優たくさん出てるし、もっとキャッチーな宣伝もありだったのでは。左翼映画だとばかり思ってたよ。
それにしてもみんな肌つやがよい。村人に見えるまで時間がかかった。1923年は祖父が3歳。祖父母を思うと、当時の人たちは「近代的自我」みたいなのはあまりなかったんじゃないかな。はっきり意見をいう女性たちにやや違和感はあった。仕方ないけど。新聞記者に夢見すぎかな。サラリーマンだよ。部長に意見なんてしない。
良かったシーン
馬買ってきなっていうたくましさ
土手で妻の不貞をみている男と目が合うところ
新聞記者と社会主義者はなんか浮いてた
水道橋博士よかった。ああいう役はやっぱり背の低い男でなくてはいけない。デカいとああはならないんだな