「【"関東大震災時の流言蜚語に踊らされた人々、利用した人々。"今作は、人間の愚かさ、醜さ、集団心理の恐ろしさを描いた作品であり、この国が且つての様な過ちを起こす国にならない事を切に願った作品でもある。】」福田村事件 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"関東大震災時の流言蜚語に踊らされた人々、利用した人々。"今作は、人間の愚かさ、醜さ、集団心理の恐ろしさを描いた作品であり、この国が且つての様な過ちを起こす国にならない事を切に願った作品でもある。】
- 関東大震災時の朝鮮の民や、社会主義思想者が六千人虐殺された事は知っていたが、福田村事件に付いては、恥ずかしながら知らなかった。
何故に、東京ではない、千葉の福田村であのような虐殺が起こった理由を、今作品では、人間の愚かさ、弱さ、醜さ、集団心理、同調圧力の恐ろしさの面から嫌と言う程、見せつけるのである。-
◆感想
・大正12年に、朝鮮語教師だった澤田(井浦新)が妻の静子(田中麗奈)と共に故郷の福田村に戻って来る。
更に、同じ列車に乗っていた夫を亡くした咲江(コムアイ)が骨壺を持って戻って来る。
ー 大正デモクラシーが隆盛を誇っていたが、一方では日本が、第二次世界大戦に邁進していく時期である。
現代の日本が、大正時代に似ていると何人かの政治学者及び歴史学者が指摘している事はご存じの通りである。
朝鮮で、日本人による朝鮮人虐殺に不本意ながら通訳として関わった澤田は、
故郷に戻っても教職についてくれと頼む村長(豊原功補)の言葉を聞きながら、農家になると呟くのである。-
・澤田は、事件のショックで性的不能者になり、妻を抱くことができず、静子は不満を持つ。そして、わざわざ作った朝鮮料理の夕餉の際に夫に家を出ると告げるのである。
ー 静子は、渡し船の船頭(東出昌大)と船上で関係を持つが、その姿を船頭と昔、良い仲で会った咲江と澤田は黙って観ているのである。
澤田は、朝鮮でも日本でも”傍観者”なのである。豆腐屋を営む、咲江の表情は複雑だ。ー
■そして、同年9月1日に関東大震災が起こる。作品は当日とその後の日々を一日ずつ、描いて行く。
二日目には既に”鮮人が建物に火を付けた。””鮮人が女を犯している。”鮮人が水に毒を入れている。”という流言蜚語が流れている。”見たのか?”と言う問いかけには、皆が”嫌、噂で・・。”と言うばかり。
社会主義者の平澤計七(カトウシンスケ)は、その噂を流していた男の顔を見て”警官だ・・。”と呟くのである。
当時の政府が、関東大震災に乗じ、朝鮮人撲滅、社会主義者撲滅を画策していた事は衆知の事実だが、正にこの頃から日本は不寛容な国家になって行ったことが良く分かる。
又、日本国民がその流言蜚語に踊らされていた事も・・。
・東京に戒厳令が施行される中、福田村には四国の讃岐から穢多でもある薬売りの一団がやって来る。そして、彼らは讃岐弁が分かりにくい事もあり、鮮人ではないかと疑われるのである。
薬売りの団長(永山瑛太)が"朝鮮人なら、殺しても良いのか!"と叫ぶ言葉も重い。
ー このシーンは恐ろしい。団長が薬剤販売免許の紙を警官に渡し、警官が本物かどうか確認しに行った際に、夫が東京に出稼ぎに行って鮮人に殺されたと思い込んでいた女が無表情のまま手にした鎌を、団長の頭に突き立てるのである。
その後は国粋主義者の若者が日本刀で女や幼子に切りつけていく。
正に誤った集団心理の恐ろしさが、如実に描かれているシーンであろう。
河原に逃げたインテリの薬売りの若者が絶望の表情で呟いた言葉は、忘れ難い。
”何のために、生まれて来たのか・・。”
そして、彼は村人たちの竹槍でめった刺しにされるのである。
更に、罪無くも殺された薬売り達は、川に流されるのである。
日本人が流言蜚語に踊らされ、同じ日本人を9人(お腹の赤子を入れると10人)殺めたのである・・。-
・残りの薬売り達は針金で縛られている。そこで、漸く澤田は”傍観者”の立場を振り払い”彼らは日本人だ!”と且つて妻、静子に薬を売りに来た少年を見ながら叫ぶのである。
ー 澤田が、過去の呪縛を自ら解き放ったシーンである。
そして、静子の澤田を見る表情が、少しだけ変わっているのである。-
<この作品は、実に恐ろしい。
人間の持つ様々な”業”が赤裸々に描かれているからである。
マイノリティに対して、不寛容な言葉を発する国会議員が居る日本。
ヘイトスピーチが無くならない日本。
今作は、この国が、かつての様な過ちを起こす国にならない事を切に願った作品でもある。
そのためには、マスメディアがキチンと真実を掴み、政府に忖度せずに、国民に正しい情報を流す機能を維持すること事が、必須なのである。
私たちは、過去の負の歴史を、今一度学ばなければいけない時が来ていると思うのである。>
<2023年9月10日 刈谷日劇にて鑑賞>
貴重なエピソード&情報の数々、ありがとうございます〜。
初渥美半島、行ってきましたよー♪
マルカ農園もあかばねロコステーションも田原めっくんはうすも立ち寄りました。
めっくんはうすが1番お得な価格の印象を受けましたね。
あかばねロコステーションは多肉植物が充実していて少し買い込みました。
フグですか♪
それは良いですね。また寒い時期に検討してみますね。
若者の新聞離れは深刻ですね。
私もA紙とY紙の朝刊は日課に。M、S、Nは時折って感じです。
前職当時は職員室に大手5紙程度は毎朝届いてましたけれど昨今の現場はどうなのかなぁ?経費節減で購入していないような気がするなぁ、知らんけど。現職の友人に聞いてみようかな。
NOBUさんの大学時代のご友人は幅が広いですね♪
しかし、まさか「みどるこあ」な方々までも?
学生時代ですと90年代でしょうか?円卓会議と村山首相で三里塚関係は穏やかだったと思ってました。それとも2000年以降の火炎関係かな。
私も職場の先輩には「昔、青ヘル被ってた」なんて方もおりましたけれど、同世代以降にはリアル活動家は無縁の気がしていました。
ちょっとびっくりです。
コメントありがとうございます。福田村事件は監督自身も初めは知らなかったらしいですからね。地元でも当時のことを知る人は口をつぐんだり、あるいは地域の祭りがなくなったりして高齢者から若者へ語り継ぐ機会も失われていったらしいです。
市民グループが事実を調査してやっと2003年に慰霊碑が建てられてからは野田市の元市役所職員の市川氏が語り部となって訪れた人に事件のことを伝え続けているとのことです。
市川氏は受け止めるのはつらい事実だが後世に残すべきだとおっしゃってますね。
共感ありがとうございます。
私がそうでしたが、今作の事を知って初めてこの事件を知りました。強烈なショックがあり、今作は思想以前にショック映画なのだと感じています。又この事件が闇に葬られてきた事を考えると、ドキュメンタリーの方が伝わる、という意見は安易だと思います。
こんばんは。「過去に学ばないものは過ちを繰り返す。」アメリカの哲学者ジョージ・サンタヤーナの言葉です。
二度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、過去の負の歴史を真正面から見つめて教訓にして生きて行きたいと思います。