渇いた鉢のレビュー・感想・評価
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「僕にはもう何も無いんですよ・・・」
兎に角、胸を締め付けられるシーンの連続であり、現実と想像のシークエンスがシームレスに混ざり合う構成である そして娘の格好でのシークエンスは正に妄想が具現化した造りで、その異様さに心が揺さぶられる
他のサイトレビューでは冗長とのことだが、確かにテンポは遅い それはこの主人公の追体験を表現する演出になっているから、観客にとっては絶対逃げられない(逃げたければ途中退席)過酷な義務を強いる造りなのであり、その忖度無い覚悟に賛辞を贈りたい 決して迎合しない矜持を映画作品として完成させた監督は立派だと思う 編集面、BGM等細かさも要求したいが、それ以上に今作の掛ける意気込みを充分に共有できた
その中でも特に自分が注目すべき点は市井の被害者家族に対する残虐な誹謗中傷の留守電により、死ななくてもよい妻が自殺をしてしまったシーン
何度も何度もこの繰り返しに、どうして脱却できないのかと暗澹たる想いに心が沈む
昨今のLGBTQ+問題に於けるネット上のヘイト発言(本人達はいっぱしの論客と勘違いしてるだろうが)と紛うことなく同等の内容である 勝手な妄想、勝手な悲観、そして冷静を装う勝手な正義漢 自身の人生に於いての理不尽さが解消されない事への不平不満を、弱い人にぶつけることで溜飲が下げられる性根の浅ましさ、歪んだ信条 その根幹は"上にぶつけても問題解決しない諦めと、しかし被害者はお前だけじゃないという弱者同士の潰し合い"という極めて為政者にとって都合の良いサイクルを弱者自ら自己構築してしまっている事が原因なのであろう このウィークポイントを解消する為の施策・・・これが一番の人類のアップデートすべき重要課題であることが今作に於けるメッセージだと強く感じた
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