「『ローズマリーの赤ちゃん』系統のサスペンス風味のよく効いた作品」呪われた息子の母 ローラ 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
『ローズマリーの赤ちゃん』系統のサスペンス風味のよく効いた作品
一人の女性が悪魔に犯され妊娠し、悪魔を崇拝するカルト教団がその子供を自分たちのものにしようとするというのは『ローズマリーの赤ちゃん』以来、しばしば登場する設定だと思う。そして付け狙われる女性の不安や錯乱から、それが事実か否か登場人物たちばかりか、観客にも不確かに思えてきて、それがサスペンスを生む。
本作はその『ローズマリー』系の1作で、冒頭から車で逃走する妊婦をカルト教団の車が追い回し、カーチェイスの直後に彼女が出産するという、なかなか刺激的なシーンから始まる。
次のシーンは出産から5、6年後で、母親は熱心に子育てに励み、子供は普通に小学校に通う平和な日常を送っている。そんなある夜、突然、息子のベッドを多数のカルト教団信者が取り囲んでいたことから事態は一変する。
体調に異変を来した息子を病院に入院させるが、医師たちの会話を盗み聞きすると、彼らはカルトのメンバーだった。病院から脱け出して知人女性の家に子を預けた母親が戻ってみると、あろうことか子がその女性の腹をえぐり、内臓を喰いまくり、「体調が良くなった」と言うではないか。ここまでくると『ローズマリー』とはテイストが完全に異なり、ゾンビやエクソシストに近い雰囲気である。
親子2人はモーテルや昔の知人宅を転々とするが、行く先々で人を喰い、殺していく。母親は、最後に自ら悪魔を呼び出して、息子を治させようとしたところに警官が踏み込み、「お前の話は全部お前の病気が見せた妄想で、悪魔などいない」と説得される。
しかし彼女は信じようとせず、「悪魔の子は自分で始末をつける」と殺そうとした瞬間、警官に射殺されるのである。
展開から言えば、警官の言ったことが事実で、悪魔どころかカルト教団も存在せず、子供が人間を喰ったというのも母親の妄想なのか――。そういう設定で終わるのもありかと思って、ラストシーンを眺めていると、そこでまたまたどんでん返しが…w
この系統の映画としては、サスペンス風味が利いているし、知人や親身になってくれる刑事のキャラクターもしっかりして、最後まで飽きない。