「ブッチャーがヴィーガンをぐちゃぐちゃにする」ヴィーガンズ・ハム 茂野翔さんの映画レビュー(感想・評価)
ブッチャーがヴィーガンをぐちゃぐちゃにする
◎ あらすじ
町で肉屋を営むパスカル夫妻は、経営難にあえいでいた。そんなある日、過激派のヴィーガンによる襲撃を受ける。店は損害を被り、妻からは愛想を尽かされ、同業で商売繁盛している友人夫婦からは自慢の嵐。泣きっ面に蜂の夫・ヴァンサンは、偶然遭遇した襲撃犯の1人を酒に酔った勢いで轢き殺してしまう。ヴァンサンは、死体を町中のゴミ箱に捨てて証拠隠滅を図ろうとするが、解体した肉を妻・ソフィーが誤って、店頭に並べ、あろうことか販売してしまう。さらにはなんと、人肉が大好評となり、店に客が殺到する。経営立て直しを目指して、ヴィーガン狩りを始めた二人の行方は一体・・・
◎ 総評
この作品は、コメディである。倫理観を持ち込んではならない。
それを踏まえた上で意見を述べると、クソ面白い。過去に鑑賞済みだが、それでも笑える。
終始コントを見ているかのような気分になる。例えば、初めてヴィーガンを殺すシーンでは、嫌なことが立て続けに起きたことや、酒が入っていたことを踏まえても、思い切りが良すぎる。夫妻はほとんど驚く素振りを見せずに、冷静に「肉を食わないから弱いんだ」などとツッコミを入れている。他にも、犬に必ずソーセージ(*男性器)を食べさせる上、ヴィーガンに「鶏の気持ちになれば、卵を食べるということは、卵子を奪われることだ(意訳)」と説教された際には、「閉経している」とトンデモなくキレッキレの返しを見せてくれるなど、センスがありすぎる。そもそも、客から人肉の正体を聞かれた際に、咄嗟に「イラン豚」と言っている時点で、爆笑必至である。(イスラム教において、豚肉は禁忌)
話の構成もよく出来ている。90分弱の尺でどうやって話をまとめるのかと分からず、一生ヴィーガンを殺して終わるのかと思っていたが、途中途中に伏線を張って、最後には綺麗なオチをつけている点が素晴らしい。物語として成立しつつ、コメディテイストは崩さないというスタンスを高く評価したい。
他にも笑える場面は山ほどある(実際、たくさんメモしてある)が、この続きはぜひご自身の目で確かめてほしい。酒を片手に一人で見ても、友人や恋人と一緒に見ても楽しめる作品となっている。親子で見ても笑えるが、コメディとはいえ殺人シーンだらけなので、教育上の影響に留意してほしい。