「面白い、と、面白そう、の狭間。」アムステルダム 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
面白い、と、面白そう、の狭間。
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曲者ばかりの超豪華キャストで、実話をベースにしつつも大きく飛躍して、デヴィッド・O・ラッセルが狂騒のドタバタコメディを撮る。『アメリカン・ハッスル』が大好きな人間としては、期待せずにはいられない。実際には、これまでのラッセル作品にはないストレートで切実なメッセージ性もあって、すさまじい大傑作が生まれてもおかしくなかったはず。
ただ、残念なのはお話も映像も演技も、どれもすごく面白そうでいて、決して面白くないわけではないのだが、ただ、面白そう、がずっと続いたまま終わってしまうこと。面白い、と、面白そう、はイコールではない。
おそらく原因は、どのキャラクターも濃厚で個性的ではあるのだが、個性が確立しすぎていてゆらぎがないからではないか。物語の背景には常識や価値観を揺るがせる巨大な陰謀があり、主人公たちはさまざまな試練に見舞われる。しかし、特に葛藤するわけでも、だんだん知らなかった一面が見えてくるでもなく、ずっと同じように存在していて、物語を動かす原動力になっていない。特に善人と悪人とがハッキリわかれてしまっているのがもったいない。
それでもやはりクリスチャン・ベールの奇妙にぶっ壊れた演技は魅力的だし、マーゴット・ロビーからは目が離せないし、脇役たちもいちいち目立っている。なんだかんだで最後まで観れてしまう。あまりにもゲスト扱いすぎるテイラー・スウィフト目当てで観るのでなければ、損はしないとは思う。でもまあ、もっとやれたのではないかとも思ってしまうのもまた仕方ないことだと思う。
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