「怖いお兄さんがバックにいるお店だと、6000円では済まないのだろうか」フィリピンパブ嬢の社会学 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
怖いお兄さんがバックにいるお店だと、6000円では済まないのだろうか
2024.4.11 一部字幕 MOVIX京都
2023年の日本映画(114分、G)
原作は中島弘象の同名新書
フィリピン・パブ嬢の実態を調査しようと考えた大学院生がトラブルに巻き込まれる様子を描いたヒューマンコメディ
監督は白羽弥仁
脚本は大河内聡
物語の舞台は、2013年の日本の愛知県
中部大学の国際関係学科の大学院に進んだ中島翔太(前田航基)は、論文のテーマに「フィリピン・パブ嬢の実態調査」を選んだ
教授の池内(田中美里)は「面白い」と評価し、翔太はパブ嬢にコンタクトを取り、話を聞くためにパブにいくことになった
パブ嬢のマリア(Uchiyama Lerma)は「MOON RIVER」というお店に彼を連れて行き、ジャネット(Ramos Marjore)が翔太の接客をすることになった
そこにはパブ常連のシバタ(近藤芳正)もいて、翔太は「同世代の人から話を聞きたい」と思って、「もっと、若い子はいませんか?」と失礼なことを言い始めてしまう
そこでシバタは「ミズキ(Raine Dione)」を呼び出して、彼女が接客に就くことになった
シバタは「今度来るときは俺の名前を出せ」と言って去り、翔太の初回の調査は終わりを告げた
別の日、再び繁華街を訪れた翔太は、客引き(Mark Anthony Viray)に声を掛けられ、「シバタ」の名前を出す
すると彼は、「マリポーザ」という店に彼を連れて行き、そこでミカ(一宮レイゼル)という少し年上の女性と出会うことができたのである
物語は、ミカに惚れ込んだ翔太が「店の外で会う」ことになって、さらにのめり込んでいく様子が描かれていく
ミカには偽装結婚の相手・小久保(仁科貴)がいて、マネージャーの李(飯島珠奈)が目を光らせているが、友人のアキ(ステファニー・アリアン)の部屋を借りて密会を繰り返していく
だが、ミカは正直にアリスママ(浦浜アリサ)に翔太との関係を伝えていて、そして会長(津田寛治)は「ある選択」を迫るのである
論文がどうなったのかは正直なところわからないが、書籍になったぐらいなのでちゃんと完成させたのだと思う
その内容に関しては未読だが、ここまでコミカルな物語というものではないのだろう
映画がエンタメに振り切っていながらも、フィリピンから女性を日本に来させるシステムなども説明していく
そこまで真新しいネタではないものの、合法でシステムを作るのは彼らの領域なので、そのさわりにタッチした、という感じになっている
ガチでやばいカラクリは映画にはできないので、既知で軽めのテイストでミカたちの出自を描くことになったのは英断なのだと思う
いずれにせよ、軽めでいてスリリングで、オチもなかなか巧妙で面白い作品だった
翔太とミカがいつの時点で本気になったのかは分かりにくかったが、このあたりはフィリピンの女性の貞操観念とか、恋愛観というものが分からないので「こんな感じなのかな」と捉えるしかないと思う
シバタのような人間は結構いると思うが、彼が言う「異性から好きだと言われない日本人男性に対する訴求効果」と言うものは確かに存在するので、そこまで高くないお金でその満足が得られるのは良いことかもしれない
願わくば、中間搾取がなく、健全に彼女たちが稼げて、もっと多くのお金を母国に送ることができるのならば良いのかなと思った