「安田現象さんを知らないと評価が二分すると思う」メイクアガール 兎さんの映画レビュー(感想・評価)
安田現象さんを知らないと評価が二分すると思う
公開初日の初回に観に行ってきました
イラストを担当する安田現象さんのクラウドファンディングに出資していたので個人的にワクワクでした
ストーリーは
男子高校生主人公の水溜明が水溜稲葉(母親)から引き継いだ研究に行き詰まり、
彼女が出来たクラスメイトの邦人に「彼女ができてパワーアップした」「お前も彼女を作れ」と言われ『彼女をつくればパワーアップ出来る(→研究が進む』と思い込み、人造彼女0号を作り出す
と言ったもの
行き着く結末が分からない故にどうなるのかとても気になっていた
上映鑑賞中の感想として、開始10分で
「あ、これ意見二分割するわ」
「安田現象ワールド知らないと『微妙なアニメ映画って低評価つく」と頭によぎった
イラストを担当されている安田現象さんは元々Short動画を専門とされていて、ギャグ調なアニメを投稿されています
それが初回映画に移るとなると畑が違うわけで。
人間の仕草、行動の流れなんかに違和感を感じる
規模数億、数年かけた最近のアニメ映画とも差が出てくるのは当然
ですが映画観にくるほとんどの人はそんなこと知らないわけです
クラウドファンディング完遂日が2022年10月31日、収益2373万805円
映画作成まで約2年とちょっと
低予算かつあのクオリティの作画で全国メジャーな映画館で上映できてるのは奇跡かと(映画前広告が相当長かったので、いろんなとこにも頭下げて回ったんでしょうし)
2027年にも映画作られるそうなので今から楽しみです
それはさておき、映画の評価は個人的に★5
人間の動作的に微妙なところはあったものの話の流れとしては分かりやすかった
「主人公がパワーアップの為に彼女作っちゃった」という一見ギャグな設定
ラブロマンスに行き着くと思いきや、近未来SF・恋愛・ギャグ・アクション・バイオレンスがギュッと詰め込まれてる
Twitterや映画レビューで「なにがしたいのか分からん」的な意見が多々ありました
自分も見終わって落ち着いて整理するまでは同じ意見です
ただ整理が終わるとかなりゾッとする考察に行き着きます
パッと見の結末としては
「0号は自身の感情はプログラムされたものじゃないと明に受け入れられる。気絶したが目覚めて明と家族になって日常に戻る。明も人間的にパワーアップした」
というもの
クラスメイトの邦人もバイト先の年上の彼女と寄りを戻せて、クラスメイトの茜も明への恋心を諦めずに済み、0号もバイトしながらリハビリして丸くハッピーエンドに向かえる。
シナリオとして蟠りもないように捉えられます
ただこれだと説明がつかない部分がいくつか出て来ます
ここからは個人の考察なので軽く読み飛ばしてもらえたら幸いです
・稲葉はなぜ0号の作成を記憶媒体に保存していたのか、なぜ託したのか
・ラストの0号が言った「明くん」の一言
結論から言います
稲葉は自身の記憶媒体を託し、明に自分の依代を作らせて 所謂転生行おうとして成功しています
天才科学者である稲葉は明を作り出します
父親の言及がないのでおかしいなとは思っていましたが、話の流れで明は作られた存在だと察しが付きます
人間的感情や行動に異常が見られる明はおそらく失敗作(しかし天才の知能は引き継いでいるので記憶を読み解ける)
改善を行い、人造人間(第三人類)を完成させようとしていた矢先に病気の発覚があったのでしょう
病気の治療もせず、ラボに籠って死を迎えたのも最後まで足掻いた結果です
明がラボでソルトに頭を触られた際、仮想世界内で母親とあった際
「また話せますか」と明に問われます
本来ここは「また話せる」「話せない」無言、この3択にほぼ絞られてきます
しかし稲葉は「生きなさい」と放ちます
この「生きなさい」には「生きる事で自身への利益が齎される」という意味が込められていたのではないかと
明が行動を起こさなければ0号は突き放された事で人間的に成熟することはなく、稲葉の依代としての覚醒を果たす事は出来ません
0号が明をナイフで刺し、自壊し苦しんでいるところへ必死に介入しようとしていたのも自身の身体になる0号の破壊を避けたかったからでしょう
(稲葉が人間性のある感情を出したのもその時だけ。しかも、弾かれたということは干渉ができるということ(明を動かせないのに、稲葉自ら0号へ行動を起こせるのはおかしい))
自身をプログラムされた存在じゃないと証明した0号が気絶したのは、おそらく自壊プログラムを克服した一人の人間として"完成"したから
気絶したまま目覚めなかったのは、よそにあるバックアップから0号へ記憶を移植していたからではないでしょうか
もし0号が本当に0号のままなら、明が帰ってくるまで部屋で待つか、明の部屋に行く、もしくは明へ連絡を取るなどしたはず
目を覚ました彼女が行ったのはラボ
彼女が立っていたのは稲葉が病死した場所
口にした「明くん」から察するにもう0号はいないでしょう
これからなんの研究をするかで彼女の頭はいっぱいじゃないでしょうか
探せばまだ稲葉に関する転生の証拠も出てくるはずです
(自分は二週目特典ついでに粗探ししてきます)
明くんにちょっかいかける絵里さんについても少し
絵里さんが犯人なのは庄一(義父)との会話ですぐ判明したの良かったです
ブラックソルトを紹介する時に強化した部分に「逃げ足」という言葉を使った
強化個体なら犯人を撃退できるように「追跡」が正しい
あとはラボでマウスを破壊するほど感情的になったりと、なにかしら科学者としての葛藤はあるだろうなと
犯人としてもう少し抵抗や、後日談があればさらに良かった
最後に良かった点悪かった点
良
・低コストの割に高クオリティ
・考察のあるシナリオ
・キャラがゴチャゴチャしてなくて分かりやすい
・0号のバイト以降可愛さが増えて良い
・ラボがラボラボしすぎて無くて、ガレージ(倉庫)とのミックス感あって好き
・串刺しにされまくった明の腕が義手に完装された際のリアクションが軽くて良かった(義手になってリハビリだの落ち込んでたりだのしたら重苦しい終わり方になってイヤだったので)
・犯人追跡時の近未来SF感やソルトの合体電動スクーターや明の右手のターボ機能のワクワク感
悪
・人間の動作が少しぎこちない
(最初の絵里さんの出勤時の庄一との挨拶や、ハンバーグにまるごと齧り付く明、ドアが開いたのに呼び鈴を鳴らそうとしてる0号等)
・ストーリーが足早で深みが薄い(上映時間が短いので致し方ないのは分かる)
・何の実験をして、どういう結果が得たいのかがよく分からないこと(ラボのソルトを強化したいのか、新しいプログラムを入れてるのか分からず壊れまくってるのは疑問だった)
クラウドファンディングした身なので多少の贔屓はありますが、大体こんなレビューです
低評価高評価どちらの意見も分かるので「他人のこの評価はおかしい!」なんて言いません
これなら躍進していく安田現象ワールドを今から楽しみにしてます
★2回目鑑賞後↓★
2回目観てきました
1回目と違って細かい部分が見れたので考察が深くなりました
主に気になったのが
・明の研究がストーリーのある部分まで全く進展しないのはなぜなのか
・明が仮想世界内で母親と話した際に「生きなさい」と言われて目が黄色く光っていた
・ナイフでめった刺しにされた後、明の目が黄色く光っていた
・エンディングでの0号の挙動
結論から言うと
明も0号と同じで人造人間、第三人類
かつ、明の行動(0号作成から成長まで)もあらかじめプログラムされた行動な可能性
0号へ稲葉の記憶が追加されたのではなく「0号を通して得た知識を観測した稲葉の記憶を書き込まれた」
最初に疑問に思ったのが「明も稲葉に作られたんだよな」という点
明は稲葉に作られたのでなにかしらプログラムが仕込まれててもおかしくないのですが、初回では見逃してました
仮想世界内で稲葉と接触して最後の「生きなさい。あの子と一緒に生きなさい」と言われた直後、ショタ明の目が黄色く光っていました
あの黄色く光る眼はパソコンで言うところの処理中を受け付けている際のランプと一緒なのかと
となると、問題は「稲葉は何のプログラムを始動させたのか」という点
仮想世界から茜のビンタで目覚めた明が最初にしたのはなにか
稲葉から引きついた研究の完成です
バラバラになったソルトは電動スクーターに変形して完成
なんらかのプログラムを入れられていたソルトは見事にプログラムの書き込みに成功し完成
となると次の完成は0号になります(あとはストーリーの通り)
研究の完成に喜ぶや否や、ここで一つ仮説が生まれます
「明の研究が進展を迎えてなかったのは稲葉のプログラムが原因で塞き止められていたのでは」
明の研究が行き詰っていたのは果たして明の実力不足だったのか
稲葉との接触してすぐすべての研究が完成に導かれています
しかも起きた直後に明の"自主性"で0号に会いに行こうとしています
仮に明が稲葉の知識を完璧に理解していたとしたら明は0号を作ることはなかったし、自主性を学ぶこともなかったでしょう
となると、天才科学者の稲葉ならシナリオはしっかり作るはず
研究が行き詰まり、あらゆる可能性を経て研究を進めようとする
彼女を作るという発想も想定済みでしょう
なぜなら、明を作った際の人造人間技術は"なぜか"失敗せずに正常に流用できたのだから
0号自身にプログラムではないと証明するために滅多打ち滅多刺しにされた明ですが、明自身も黄色い光を目から小さく発していました
あのタイミングで実行する処理が分かりませんでしたが、稲葉がなんらかの干渉を行ったのではないかと予想します
稲葉に記憶を書き換えられた根拠としては、ラストの「0号の目の光の無さ」と「エンディングに流れてくる0号のバイト風景」です
稲葉は登場シーンでは常に目に光がなく特徴的な瞳をしています
対して0号の瞳は瞳孔の上に白い光があります
最後のラボで明と再会した0号の瞳には白い光がありません
エンディングで流れてくる0号のバイト風景は、バイトを始めた頃と同じく鍋で肉を焦がし、水をこぼし、メニューの提供先が分からずホールをうろちょろしています
入院患者が長期寝たきりで筋肉が弱り、思う様に身体が動かせないのとは明らかに動きが違います
「やったことがない。0から学んでいる」といった風
もっと言えば、元の0号でもしなかったホールでの提供ミスまでしてしまっている
これはもう別人が新しくバイトを習っている と疑ってしまう
エンディングの最後に0号が稲葉の使っていたリフト台座を使って何かを研究していて降りてくるシーンはもう公式が稲葉の存在を示唆しているといっても過言ではない
絵里が解読できない内容の研究を、0号が易々と理解して手伝ったり自主的に進めるのもおかしな話
仮説ですが
稲葉は0号(第三人類かつ自分の転生先の依り代)作成の為に明を生み出す
稲葉自身はAIで自分を作り出し、スパコンにデータを保存している
明は生み出される過程で命令されたプログラム通りに生き、研究に行き詰まり進展を求めて彼女(0号)作成に着手
成長の過程で自身の手助けがいることを見越して、明と仮想世界で接触、研究を進展させてソルトを使ってネットワークへの介入を可能にする
絵里から0号解放後、0号が自身の気持ちがプログラムでないと証明するために危害を加えて自壊(生態)プログラムで壊れそうになるところへ干渉するが失敗
結果的に0号は耐えた、もしくはギリギリ精神が壊れた為、意識を失っている間に稲葉の記憶を0号へ書き換えて入れ替わる形で復帰(完全な上書きだと周囲に違和感を持たれかねないので、おそらく0号の人間関係程度は残していたのかと)
明も第三人類ではあるものの、稲葉のプログラムで動いているので0号(稲葉)と家族をすることになる
AIの稲葉は今もネットワークを介して明を監視している(ラストでタクシーのカメラが明を注視していた)
こんな感じになりました