「まずは明に恋愛が何かを教える必要があるのだが、青年期の性的な反応がないのは残念かなあと思った」メイクアガール Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
まずは明に恋愛が何かを教える必要があるのだが、青年期の性的な反応がないのは残念かなあと思った
2024.1.31 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(92分、G)
コミュ障の天才科学者が恋愛学習ドールを作るSF映画
監督&脚本は安田現象
物語の舞台は、近未来の日本
天才科学者の母・水溜稲葉(種崎敦美)と大学教授の父・高崎庄一(上田耀司)との間に生まれた水溜明(堀江瞬、幼少期:日向未南)は、自身の研究がうまくいかなくて焦っていた
新しいものを作ろうとしてもうまくいかず、失敗ばかりが募る日々を過ごしていて、学校でも問題ばかり起こしていた
ある日のこと、クラスメイトで親友の邦人(増田俊樹)に恋人(和久野愛佳)ができ、それによって「パワーアップする」ことを知った明は、独自に人造人間の制作に取り組んだ
明は完成した人造人間に「0号(種崎敦美)」と名付け、一緒に学校に連れて行ってしまう
邦人とクラスメイトの茜(雨宮天)は呆れながらも「明らしい」と受け入れ、ほのぼのとした日常が始まった
物語は、0号に彼女なる存在が何なのかを学ばせるというものだが、行っていることは一般社会の過ごし方となっていた
学校生活、アルバイトなど、彼女になる前に必要な人間学習がメインで、一応は喜怒哀楽についてはインプットされているようだった
このあたりの情報を明がインプットしているので偏っている
彼自身がコミュ障、恋愛興味なしという人物なので、目的に至るまでに学ばせることが多すぎるように思えた
若者の青春にありがちな性的な反応などは一切なく、明に気があるふうの茜も0号には嫉妬しない
人造人間だとわかっているからだと思うが、目の前であれこれされたら気になってしまうのは普通のように思う
そもそも明があのビジュアルの女の子を彼女に設定している時点で何らかの意図があるのだが、そのあたりのツッコミはほとんどない
これについては後半で明かされ、そのベースとなる女性観というものがわかるし、明の出自からそうなることは理解できる
だが、周囲の普通の人間の反応が「普通」ではないので、観客側が感じる違和感を作品内で解消しないのは微妙だなあと思った
その後の展開は無理に動きを作ろうとしているのだが、そのスケールがかなり小規模となっている
作画の大変さはわかるものの、敵のスケールは数で表現されることが多いし、少ない場合でも圧倒的な力量差というものが必要になってくる
本作は、そのどちらでもないので、0号を奪い合う展開にハラハラしないのが難点であるように思う
作画はとても美しく、キャラデザとかガジェットも好みなのだが、シナリオの作り込みはプロに託した方が良かったかもしれない
人間の母親が作った人造人間が作った人造人間が0号、ということになるのだが、母親の転生先を息子に作らせたのか、人造人間が人間を作ったら(AIが人間なるものを作ったら)という実験だったのかはわからない
わかりやすく、AIがAIを作るという展開になって、その危険性をテーマとするならば良いと思うのだが、そこまで深めには設定していないようなので、このビジュアルが動くところを見たいという人向けの映画だったのかな、と感じた
いずれにせよ、明は常にゴーグルをしているわけだが、このようなキャラ付けをするにはある程度の意味を持たせる必要があると思う
彼がゴーグルを外さない理由とか、外すタイミングで描かれることなども意味を帯びてくると思う
また、明を普通と思っている人ばかりが登場するのだが、彼を普通だと思っていない人もいると思うので、そう言った人を登場させることで、人間関係の広さというものを表現できたのだと思う
それによって、明という人間がこの世界でどれぐらいマイノリティ寄りなのかもわかるし、どの領域で物語が展開するのかも見えやすい
そう言った全体図を描きつつ、その枠外に向かう物語を作ることで、より深みが増したのではないか、と感じた