「WONDERFUL」大名倒産 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
WONDERFUL
この手の作品、当たりでも外れでもない、無難な仕上げになってる作品が多いのと、インパクト不足なのもあってヒットしないせいなのか、コロナ禍以降歴史系の作品はかなり減った印象です。ここまでの王道歴史コメディは久々な気がします。
突然大名の隠し子の事実が明かされ、潘を収める大名になったものの、その藩は借金まみれでその借金を返済しないと切腹させられるため、どうにかこうにかして借金を返す手立てを考え奮闘する…というのが今作のメインストーリーです。
展開は全体的にスムーズでポンポン進むので、キャラクターも多く登場しますが整理がつきやすいですし、勧善懲悪、多くの味方が守ってくれて一件落着、ばら撒いていた伏線をささっと回収してくれるのも良かったです。
借金を減らすためにいらない武器を売却したり、季節のしきたりや献上品を無くしてみたり、生活スペースをまとめてみたり、宿代を浮かしてみたりと節約に節約を重ねて過ごす人たちの様子が大変そうだけれどコミカルに描いているのでとても楽しいです。
前田監督は前作の「水は海に向かって流れる」でも食べ物の描写が素晴らしかったんですが、それは今作でも健在で、特にホカホカのシャケが抜群に美味しそうでした。こういう食事周りの描写を魅力的に描いてくれるだけでもとても嬉しく思います。あと全員美味しそうに食べるのもこれまた良いです。これだけで幸せな気分になれます。
意見が合致して、大人数で行動を共にしていくシーンが今作でも特に良かった部分だと思います。野宿と言いつつも、布などを広げてキャンプの先駆け的な事をするシーンは和気藹々としていましたし、全員で帳簿をひとつひとつ確認するシーンも続々と帳簿の確認に参加していくシーンは忠誠心が強く見れて良かったです。
黒幕までたどり着いたらそこからはトントン拍子で事が進み、お金を押収していたマダムをまずひっ捕らえて、父親が裏切ったかと思いきやハッタリで、真の黒幕を明かして退治するという流れは雑っちゃ雑ですがスッキリはするので良かったかなと思います。2人で話した会話の中での視線や言動から父親のへそくりを見つけて、借金返済の足りない分に埋め合わせるという力技には笑っちゃいました。ここまでに登場した人物が総登場するラストもハッピーでなんだか嬉しかったです。
不満点を挙げるとテレビドラマ的なテロップをドーンと画面に映す演出は寒いだけなので好きではなかったです。どうしてこういうのをやって集中力を削ぐんだろうなと毎度毎度思ってしまいます。そのテロップに役者が不自然に目を向けるというのも寒かったです。
音楽も現代的なものが多く、世界観には合っていないなと思いました。前田監督の音楽のナンセンスは今に始まったものではないので、誰か指摘する人が出てこないかなとずっと願っています。
多少気になった部分はありつつも、しっかりと2時間楽しめるコメディに仕上がっていて面白かったです。エンドロールのおぼつかないダンスもなんだか可愛らしくてニヤニヤして観ていられました。まさにワンダフル!
鑑賞日 6/25
鑑賞時間 10:55〜13:05
座席 I-4