劇場公開日 2023年2月23日

「弱者が連帯する困難」エンパイア・オブ・ライト 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0弱者が連帯する困難

2023年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2022年。サム・メンデス監督。80年代イギリスの港町。映画館で働く女性は心に問題を抱えて鬱々と過ごしている。職場にやってきた魅力的な黒人青年と親しくなっていくが、ふとしたことから過去のトラウマに捕らわれ、仕事に行けなくなってしまう。一方、青年は日常的に人種差別にさらされていて、、、。暴力に抑圧される人々が連帯することの困難を描く。
幸福な人は同じように幸福だが、不幸な人々はそれぞれに不幸だ、というトルストイ(たしか「戦争と平和」うろ覚え)を引くまでもなく、弱者の連帯は難しい。幼いころのDVで心を病んだ中年女性と、人種差別に苦しむ黒人青年も個別に苦痛を感じており、相手の心の奥底に思いをはせるのは難しい。それでも、思いやることは可能であり、社会に一撃をくらわせる攻撃は可能であり、教育によって現状を抜けだすことも可能である。
映画が現実逃避の手段としか見られていない映画を撮るのはどういう監督心理なのか、といういぶかしさが残る。

文字読み