「しあわせはバリ島で」チケット・トゥ・パラダイス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
しあわせはバリ島で
“オーシャン夫妻”の次なる作戦は、娘の結婚を阻止せよ…!?
ジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニーが5度目の共演で、初のロマンチック・コメディ。
二人が演じるのは、元夫婦。若い頃スピード結婚し、その後上手く行かず、あっさり離婚。今じゃ顔を合わせ口を開く度に喧嘩、喧嘩、喧嘩…。
あの時の結婚は人生最大の失敗。それでも、娘の誕生は宝。だが、その娘が…。
ロースクールを卒業し、旅行先のバリ島で出会った現地青年と恋に落ち、スピード結婚をしようとしている。
娘よ、待って! 自分たちと同じ過ちをしちゃダメ!
結婚式出席の為、バリ島へ。相変わらず口喧嘩ばかりだが、娘の結婚を阻止する為、“共闘”するのだが…。
おいおい、親としてどーなのよ?…と一瞬思っちゃうが、案外世の中そう思ってる親って多いかも…?
それを思いっきり行動に移しちゃった設定がとにかく可笑しい。
それをジュリアとジョージがやってるのだから面白い。
掛け合い、小競り合い、舌戦…何から何まで息の合った“夫婦漫才”。名人芸級。プライベートでの仲の良さ、撮影現場での素のままの楽しさがそのまま伝わってくる。
勿論スターのオーラも充分で、それが往年のロマコメを彷彿。
やはりこの二人で、ロマンチックなコメディが見たかった!
展開も王道的。
“結婚に賛成するフリして反対する作戦”“トロイの木馬作戦”“指輪を盗め作戦”などを実施するも、ことごとく不発。
指輪は盗めたけど(また言うけど、親としてどーなのよ?)、当然後々娘にバレ、娘との関係に暗雲が…。
妻がパイロットの現カレにプロポーズされ…。
喧嘩ばかりだが、この旅を通じて、お互いちょっと意識し合ったり…。
お約束的だが、それらが心地よくハマっていく。
何もかも定番通りって訳じゃなく、本作ならではの魅力も。
まずは何と言っても、舞台のバリ島! 南国ムードが堪らなく、いや~素直にここでバカンスしたい…。
青い空、青い海。でも、イルカやヘビには気を付けて。
住人たちもフレンドリー。結婚で親族が一気に100人以上に増えるけど。
バリ島では結婚は神聖で永遠のものとされている。一方のアメリカは離婚大国。その対比も印象的。
自分たちのような過ちをしないで!…と結婚を阻止しようとするが、それは当事者たちが知るのみ。失敗するか、上手くいくか。
スピード婚とは言え晩婚とは言え、失敗する時は失敗するし、末長く幸せに続く時は末長く幸せに続く。
この娘たちの場合、根拠はないけど、上手くいくんじゃないかな。娘はカレや島を心から愛しているようだし、カレも同じ。それに性格も良さそう。
では何故、両親は上手くいかなかった…?
時、場合、事情、性格…原因は色々とある。
結婚は後悔するくらいの人生の最大の失敗だったのか…?
いや、例え一時でも幸せだった時はあるだろう。
愛する娘が産まれた。色々誤解あったけど、その娘が幸せを掴み、それを今こうして見守る事が出来ている。
顔を合わせればうんざり、口を開けば喧嘩ばかり。でもそれって、それくらい気心許しているって事なんじゃないかなぁ…?
妻は現カレとはちょっと無理してる感じだけど、元夫の前ではチョー自然体。
酸いも甘いもあったろうけど、今またこうしていられる。
意識はし合う。復縁はないかもしれない。でも、改めて存在や大切さを認識し合う。
その絶妙なさじ加減。この切っても切れない複雑な関係性が、元夫婦の“楽しみを先延ばしにしない”第二幕。