「安心、安定の仕上がり。漂う抜群のケミストリー」チケット・トゥ・パラダイス 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
安心、安定の仕上がり。漂う抜群のケミストリー
これまで4本の映画で共演しているジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニーが、製作にも名を連ねる数えて5本目の共演作。それで、演じるのは愛する娘が危険な結婚をするのを阻止するため、一緒に旅することになる元夫婦、と来れば、これはもう仕上がりは安定、安心の最たるものだろう。当然、離婚するほどソリが合わなかった2人が、例え同じ目的で共闘しようとしても上手くはいかないだろう。それでもまあ、不幸な結末は迎えないだろう。というところまで想像がついてしまうところも、旧知の間柄にあるトップスター・コンビの宿命かも知れない。
しかしその反面、脚本に綴られた定石的な展開に独特のペーソスを互いに書き加えつつ、いつしか、上質のケミストリーを発揮し始めるあたりは、この 2人ならでは。そんな空気を存分に吸い込んで、スター映画、それも、昨今珍しいラブコメの気楽で心地よい気分に浸れる貴重な時間が、この映画にはある。
ロケーション映画ファンとしては、物語の舞台であるはずのバリ島がどう見てもバリ島には見えず(ロケ地はオーストラリアのクィーンズランド州)、バリ島のエスニックカルチャーがいかにもツーリスティックなところも気になるが、そんな大人の事情を差し引いたとしても、パンデミックの最中に本作が無事に公開された喜びに、しばし浸りたいと思うのだ。
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