少女は卒業しないのレビュー・感想・評価
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絶妙なカメラワークと演出で泣かせてくる良作
舞台挨拶付き特別上映会&初日舞台挨拶で鑑賞。
河合優美さんが好きで観に行ったが、想像以上に作品自体よかった…!
キラキラした高校生活と恋愛映画と思いきや、ポップな色使いや、直接的な恋愛表現はほとんどなく、演出とカメラワーク、そして俳優の表情で泣ける作品となっていた。
カメラワークは時にドキュメンタリーのようなブレブレなショット、光と背景のボケを使った背中のショット、横からのツーショット、そして、ここぞとばかりのアップ。場面ごとに巧みに使い分けられていた。
劇伴は必要最低限で作品を邪魔せず、支えている。
最初は気になった、ぶつぶつに切られている場面展開も、各ストーリーの連続性を表現するためなのだろう。
キャスティングも、それぞれの役にぴったりで、言葉にならない細かい表現をしていた。
お目当ての河合優美さんは、期待以上、何も語らなくてもその表情だけで、画に惹き込まれる。
原作がいいとは思うが、その魅力が映画として表現されていた。
監督いわく、原作からは大きく変えているとのこと。
うまく映画用にまとまっていた。
エンドロールの主題歌は作品に寄り添ってはいたが、もう少しスローテンポで感傷に浸らせて欲しかった。
(2回目の鑑賞)
結末がわかって観ると、気づきがあって面白い。
細かい演出、小道具で季節感をあらわしたり、多くを語らずに、状況をわからせたり、工夫をしている。
また、舞台挨拶では、映画から出てきたように、それぞれの個性を活かして撮影されたことが伝わってくる。
河合優美さんは実際の卒業式でも答辞を読んだそう。イメージそのまま笑
小野さんは活発なキャラクターそのままに、素直に接するもうまくいかない後藤役。1番共感できた。
中井さんは、天然?なキャラクターでとても個性的。たどたどしい、話し方が心地よい。
小宮山さんは高校生離れした、顔ちっちゃすぎな8頭身でびっくり笑 たたずまいだけで惹きつけられる。作品では純真なんだけど、したたかなのがまたいい。
丁寧に、まっすぐに作られた作品だと改めて感じた。
2023年劇場鑑賞15,31本目
ダニー・ボーイ
舞台挨拶付き特別上映にて。
なるほど朝井リョウという感じの、学園群像劇に意外な真相付き。
案外良くて「なるほど」となる『ダニー・ボーイ』、河合優実の演技の説得力を筆頭に、主役・準主役級の若手たちの演技はなかなかのもの。あまりに青春賛歌に振りすぎてる気がしないではないが。
タイトルの出方も良かったんだが、卒業するんだかしないんだか、となりましたね…
少女、卒業しないってよ
あの「桐島、部活やめるってよ」を超える衝撃作。
桐島同様、今後日本映画界を背負って立つ俳優陣、監督さんになることを確信しました。
とにかく今作を浴びてください。
四人の高校生にとっての卒業式当日とその前日を描いた切なくも爽やかな青春譚
廃校が決まり校舎の取り壊しも決定している山梨県下の高校での卒業式とその前日の物語。春からの上京を前に地元の大学に進学する彼氏と気まずい関係になってしまった由貴、卒業式後のライブ準備に忙しい杏子、クラスに居場所がなく卒業式前日でも図書室に籠ろうとする詩織、そして卒業生代表として答辞を任されたまなみ、4人の高校生はそれぞれに秘めた想いを胸に最後の2日間をかけがえのないものにしようとしていた。
原作者が朝井リョウなので当たり前ですが、『桐島、部活やめるってよ』によく似た切ない雰囲気が印象的。『桐島〜』は同じ一日を違う視点で何度もなぞる物語だったのに対して、本作はさりげなく挿入されるカットでようやく気付かされますが巧みなミスリードでドラマに厚みを持たせています。そこは変な比較ですが『仮面ライダー THE FIRST』によく似ています。描かれる4つのストーリーはほぼ交わることなく流れてそれぞれの結末に辿り着きますが、最も切ないのはまなみの物語。何が起こったかはほとんど直接的に語られずポトポト落とされるカットの断片がずっしり重い刹那に誘います。
ただそこにいるだけでドラマが勝手に湧き上がるかのようなまなみを演じる河合優実の存在感がなんといっても圧倒的。全ての表情が美しくて尊くて、最後の主演作『古都』の山口百恵を思い出しました。小野莉奈が演じる由貴は『アルプススタンドのはしの方』で演じたあすはとよく似て胸の内のわだかまりを不自然なまでに明るい言動でカモフラージュする様が痛々しい。小宮山莉渚が演じる杏子が一番ミステリアスなキャラですが、その心の底にある思いは誰よりもプリミティブでキュート。中井友望が演じる詩織は最も地味ですが、彼女を救うのが『キャリー』であるところに胸をかきむしられました。鋭角的で精悍なマスクが印象的な『佐々木、イン、マイマイン』の藤原季節が詩織に最後の2日間の過ごし方を伝授する坂口先生を演じていたのが意外でしたが、他作品では見たことがないような柔和な表情で好演しています。
『桐島〜』のような派手なクライマックスはないものの、いかにも卒業式後のような甘酸っぱさが味わえる素晴らしい青春譚に仕上がっています。
その卒業の意味に涙なしでは見られない、河合優実の底知れぬ演技に驚く
今回の東京国際映画祭で1番注目していた作品。河合優実さん初主演を中川駿監督が撮るなら期待が上がらない訳がない。ホントに涙が止まらなくて、高校時代を「あの頃」と思える人で良かった。Q&Aの内容を交えながら記していく。
原作は朝井リョウさんの短編集。ちなみに私は未読。 その中で中川監督が4人の少女をピックアップし再構築。群像劇のようで異なる脚本としてリビルドされた。しかしながら、まなみを主人公としたのも納得。漠然と私も生活しながら感じていた事を作品に落とし込んでいて、主人公にするのも納得だ。その点は、監督へのQ&Aで聞くことができたので、下のコメント欄にネタバレありの元、書いておく。監督に「いい質問ですね」と言われ、終了後に改めて「質問ありがとうございました」と会釈されたことはしばらく思い出になりそうだ。照
学校は不思議なもので、別に誰かと仲良くしても良く、居心地が誰にとってもいい場所ではない。さらに言えば、世界の全ての中にいくつもの物語が流れている。それを交わらず、彼女たちの生活と区切りとして卒業を描くから惹かれてしまう。たった2日、されど2日。終わっていく日々の中で動いていく個々の生活は、どこか懐かしくもくすぐったい。あの面倒臭さに少し焦がれる程。しかしながら、そこは朝井リョウさん。ある秘密を携えて進んでいく。単なる青春モノではなく、「卒業する」彼女たちに捧ぐ花束たちに涙が止まらなかった。
主演は待望の初主演となった河合優実さん。監督によると、意図した演出を振っても見透かされている感覚になるとか。彼女に構図を教えて演技してもらう方がしっくり来ると言うから驚きだ。彼女自身も相変わらず心を掴んで離さない演技が今作でも出ている。何より主演としての器と輝きを自ら放っている点が素晴らしい。
小野莉奈さんに小宮山莉渚さん、中井友望さんといった今をときめく少女が集結。佐藤緋美さんや田畑志真さん、窪塚愛流さんといった学生キャストにも注目して観てほしい。個々の関係性と普遍的な学生生活を垣間見るようで微笑ましかった。
仲良くしていたあの人は今、どこで誰として生きているだろうか。キャラは変わったのだろうか。素敵なパートナーは出来ただろうか。抗うことなく終わった高校生活を改めて想いを馳せる。どこかざらついた記憶の蓋を再び開けたくなって、いつかの友に連絡をしたくなった。輝かしいあの頃と共に。
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