少女は卒業しないのレビュー・感想・評価
全112件中、21~40件目を表示
その迷いの軌跡を青春と呼ぶ
卒業式は高校生活のピリオドであっても世界の終わりではない。そんなことは百も承知だし、明日からも私たちの人生は続いていく。「さよなら」と手を振ったあの子やあの子のInstagramを私はちゃんと知っている。それでも卒業式というものに特別な意味を、ただならぬ寂寞を見出してしまう。
卒業式だけではない、少女も、高校生も、恋愛の終わりも、それ自体には何の特別さもないことを我々は知っている。知っていながら特別なことだと思っている。甘い夢想と苦い現実のせめぎあいの中を彼女たちは生きている。その迷いの軌跡を青春と呼ぶんだと思う。
俺はいまだに高校生という区分が何なのかよくわからない。ガキと呼ぶには成熟しすぎているし、大人と呼ぶには冷酷さが足りない。幽明のあわいを漂うような、実体の定まらない存在。しかしその不明瞭さを過度な神話化やフェチズム化によって無理やり固定せず、流れるがままに流しているのが本作だった。「卒業式」のために人々が存在しているのではなく、人々の存在がまずあって、そこに時間経過の必然として卒業式が立ち現れている。
少女たちが紆余曲折を経て卒業式の後の世界へと踏み出していくラストシーンはやや達観が過ぎるのではないかと思うものの、微かな爽やかさがある。そして映画の終幕をもって彼女たちの青春時代は終わりを迎える。
今や過ぎ去った日々を名残惜しげに振り返るように、「Danny Boy」の旋律がいつまでも響き続ける。
The summer's gone
and all the roses falling
'Tis you, 'tis you
must go and I must bide.
夏は終わり
バラも散り果て
あなたは去って
私は待ちぼうける
二度と還らない瞬間(とき)
廃坑となって取り壊される卒業式の前日と当日の2日間。
4人の女子高生にフォーカスして、巣立つ彼女たちの瑞々しい感性と素顔が
等身大に描かれる。
辛い経験を乗り越えながら、彼のお弁当を作り続ける
山城(河合優実)
落ちこぼれ気味の彼、の美しい歌声をある手段でみんなに届ける
軽音楽部の神田(小宮山莉渚)
みんなに溶け込めず、図書室を避難場所にしてて、
本を延滞し続けた作田(中村友望)
地元に残る彼と気の持ちよく別れたい後藤(小野莉奈)
4人は平行で一度も交わることの無い群像劇。
それぞれの時に別れを告げて巣立って行く。
そんな最後の2日間を丁寧に描いていく。
これまでは学校生活が世界のすべてだったけれど、
これからは新しい大きな世界が広がっている。
あの教室の片隅に確かにあの頃の自分が、
あなたがいます。
誰しもの姿が重なる甘酸っぱい青春の1ページ。
そして4人の少女に起こった
小さな奇蹟
それは目を凝らさなければ見逃すほど
小さくてささやか
2度と帰らない日々だけれど瞳を閉じると同級生の顔が
浮かんでくる。
私もそうだったように多くの別れと出会と決断を繰り返して、
人は大人になる。
廃校のあの時間
少女たちの「あの瞬間(とき)」は、永遠。
還リたくても還れない
閉じ込められた
「瞬間」と「永遠」
等身大
答辞を結びにしているが、それぞれの卒業模様を等価に描いていく。
いずれも過不足のない共感しやすい話で、JKに必要以上の価値を与えていないのはよかった。
(日本映画ではJKに必要以上の価値を与えてシンボライズしようとすることがよくある。少女や卒業や女子高生のキーワードからそのテの岩井俊二亜種を想像したが、そうでなくてよかった。)
主要アンサンブルは四つ。あえて仮題するなら、
①卒業演奏のいざこざ
②図書館が居場所
③上京する者と地元に残る者
④つらい答辞
①は楽しかったが森崎(佐藤緋美)のさいごの独唱が英語の歌だったことで思いっきりはずした。あれが森山直太朗のさくらだったらこの映画はサンダンスへ行って観客賞をとれた。笑
②の中井友望はおとなしい小心者の雰囲気でつかむものがあった。
(原作の)朝井リョウには節度があり、恋愛へ進展しないのがよかった。これで先生か生徒が踏みこんでしまったら、凡百な日本映画になりさがるところだった。
③はあるある話。
田舎と都会の遠距離(恋愛)はたいてい自然消滅する。
とくに若年期にどちらかが上京したばあい、1年ほどで彼/彼女はキラキラした届かない高みへ登ってしまうものだ。若者とって上京は“デビュー”と同じ。ただ15年も経つと都鄙はどうでもよくなるけどね。
おそらく④がクライマックスだったがいちばん目立たなかった。彼氏の不慮のシの描き方がわかりにくいことで、まなみ(河合優美)の悲しさへの共感が薄れた。
原作を読んでいないがさすが朝井リョウだと思った。普遍性があって背伸びせずムダがない。それでいて、しっかり琴線をとらえていた。
個人的に桐島~が言いたかったのは「高校時代のなんにもなさ」だと思っている。実在するのかしないのかわからない桐島は、なんにもなさすぎてシンボライズできない高校時代をシンボライズしていたと思う。
それに比べるとこの群像劇はずっと青春的なことをやっていた。
じぶんは50過ぎなので、こんな青春ドラマ見ていいのかな──と思わせるほど同世代向けに甘酸っぱくつくられていたと思う。
本作の長所は、話を現代の青春から導き出される病弊に落とし込んでいないこと。
並みの日本映画だったら、この手の青春映画を「じさつ」や「いじめ」を中心に据えて深刻ぶったポーズをつくって見せるにちがいない。
そうではないことが桐島や本作の価値を青天井にしている。
図書館と先生
2023年劇場鑑賞16本目 秀作 68点
2023年春で一番期待していた作品
というのも、若手女優の4人が凄まじく、由宇子の天秤や愛なのにの河合優実、アルプススタンドのはしの方の小野莉奈、ヤクザと家族の小宮山莉渚、かそけきサンカヨウの中井友望と、この上ない顔ぶれ。
結論、4人それぞれストーリー良いところ悪いところあるけど、個人的には中井友望のストーリーが好き
次に小宮山莉渚で、3位が同率って感じかな〜
演技力も藤原季節くんと組んでたのもあるけど、中井友望が一番上手だったし、突き刺さったのを覚えています
作品全体の話で言うと、正直期待よりは下回った印象で、オムニバスまでは行かないし、少しだけ絡んでくるけど、ちょっとおしゃれに作っちゃったかな〜
河合優実がカースト上位ぽく見えなかったり、小野莉奈が上京したい理由が薄かったり、キャリアが他3人より見劣るが故、ボーカル男子に印象を持ってかれた小宮山莉渚、個人的に公開前一番影が薄かったからか演技も配役もハマっていた中井友望、と対照的でした
配信されるだろうし、また見返そう
是非
キラキラだけじゃない少女たちの群像劇
嗚呼、青春映画
「ある世代の人達にとっては、たまらなく愛おしく感じられる様な作品なのだろう」ということを頭ではよく理解出来る作品でした。
しかし、私にとって歳をとるって残酷だと思うのはこういう作品を見た時かも知れないという風にも感じてしまいました。
もし10代で見ていたら宝物の様な作品になっていたかも知れないし、20代で見ていたら切ない気持ちで一杯になっていたかも知れない。30代で見ていたらある種の胸の疼きを感じていたかもかも知れないし、40代なら郷愁に浸っていたかも知れない。50代だったらどう見えるのだろう?、60代後半の私には悲しいことにもう異世界の物語でしかないのですよ。20代とは別の意味での切なさを感じてしまったのでしょうね。
卒業したくなかった少女たち!!
期待と不安が混じり合う
卒業式を目前に控えた少女たちの想いを綴った青春ドラマ。立場の異なる少女たちの心の葛藤を上手く描いている。
誰もが経験してきた卒業と別れ、そして期待と不安が混じり合う青春時代を思い出しながら少女たちの想いに共感しました。
2023-62
大人向け青春映画
2回観て良かったと、心から思った作品でした。
卒業後に廃校予定の高校に通う、4人の高校3年生の女生徒の、卒業までの2日間の高校生活に焦点を当てて描いた作品です。
4人の女生徒の仲良しグループの交流では無く、女生徒の個人個人の高校生活の人間模様や高校生活に対する想いが、スクリーン通じて伝わってきました。
実は、私は、この映画を最初に観たとき、ストーリーの展開が良く分かりませんでしたが、強い印象が残ったので、日をおいて、再度、観ました。
この映画の女生徒のように、「卒業なんか無ければ、ずっと楽しいままで居られる。」と思っている高校生は、多いかもしれません。
正方形の小型のパンフレットには、スナップ写真、登場人物の相関関係、主演女優や監督、そして原作者の作品に対する想い、出演者から自分が演じたキャラクターへの寄せ書き、「山城まなみ」が読んだ答辞など盛り沢山の内容で、パンフレットというよりも、この作品のアルバムのような印象です。
2回観て良かったと、心から思った作品でした。
原作の小説も購入したので、じっくり読もうと思います。
高校生のみずみずしい青春
2023年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️✨
Filmarksでの評価も良くて、前からなんとなく気にはなっていたんですが、明日は仕事も休みで、たまたま時間もあったので観てきました。どうやら、今日が上映最終日だったみたい(笑)
こういった高校を舞台とした青春ものは、多くの方にとっては"あるある"なんでしょうけど、暗い青春時代を過ごし、社会に出てからもあまりパッとしなかった僕には共感出来る部分は、正直少ないです。
しかし、それでも、この作品はかなり胸キュンな物語でした。セリフではなく、一つ一つのカットや"光"で、その心理を描写しているシーンは、ハッとさせられました。
河合優実演じる少女が、いるはずの"彼"に弁当箱をテーブルに置くシーンは涙でした。胸が痛くなりましたね…。
あの頃、その小さな胸にいったいどれほどの思いを私たちは抱えていたのでしょう…。
なんともほろ苦い映画でした。
ひなびた地方都市の風景が良い
少女「は」卒業しない。
取り壊しが決まっている校舎。卒業式を翌日に控えた地方のとある高校最後の2日間。交わることのない4人の“少女”。それぞれの3年間。それぞれの恋。それぞれの卒業。甘酸っぱく切ない青春群像劇。
4人の少女の恋と別れをオムニバスのように描く構成でコロコロと主人公が変わりますがちゃんとついていけました。普通こういうのってこのエピソードいまいちやな、とかあるんですけどこれは本当に4つ全てが儚さもあって淡くて心地良かった。
キャスティングも完璧で、みんなものすごく自然体。まるでリアルな友達同士の会話を盗み聞きしているようでした。地方に残る組と都会に出る組の微妙な温度差。細かな表情。柔らかな光。桜の色と花火。返せなかった本。盗まれた音源。まなみのお弁当。笑って泣けた。
河合優実は良作への出演が続いてますね。初めましての役者さんも多かったんですけど、窪塚愛流はお父さんに話し方がそっくりでした。今後も注目していきたいです。
真っ当な無常感と圧倒的な普遍性があった
多くの人が通る道
さまざまな卒業
高校生、いいね!
全112件中、21~40件目を表示












