「我が人生において至極のスリルが体験できた映画時間」FALL フォール 団鬼一さんの映画レビュー(感想・評価)
我が人生において至極のスリルが体験できた映画時間
小生の映画人生の中でこれほど最初から最後までスリルを感じられる映画を他に知らない。
新しく配信していたので夕食のお供に観ておくか程度の期待値低めで鑑賞を開始した。
観始めると、それはもうとてつもないスリルの波が小生の脳内そして体中を駆け抜けた。
再生して程なくして当たり映画だと確信し、中盤あたりでは既に食い入るように画面と対峙することになり、最後には手汗でべとべとになった両の手を合わせて祈るように観ていた。
ワンシチュエーションスリラーの傑作。
この映画においては直径1メートルほどの空間が、地上600メートルというアクセントを加えたことにより、荘厳な演劇舞台に昇華している。
常に手汗足汗が出たり、声が出たり、睾丸が縮み上がって観れた稀有な映画であった。
そこら辺のアングラなグロい映画や映像の何倍も怖い。
スリルの波を体験した小生は、満足と達成感そして喪失感を胸に秘め、画面を閉じた。
一服するためにベランダに出て初夏の夜空を見て「はは...お月様が笑ってらぁ...」そうつぶやいた小生は今、映画の衝撃を冷ますために初夏の夜風に吹かれながらレビューを書いている。
若き日は映画の考察のために学友やネット民と朝まで議論に明け暮れることもあったが、この歳になってみて難しいことは考えずに直感的に映画を観ることの楽しさを知った。
映画マニアとしてはキャラ設定、CG演出、音響、日本語字幕、配給会社など深掘りしていくと冷める部分が出て来るかもしれない。
しかし頭を空っぽにして観た本作品は最高にスリリングでおもしろい。
映画には考察する楽しさもあるが、映画マニア以外の大半の人は楽しい、可笑しい、感動する、かっこいい、怖いくらいの感想でいいのだ。
余計なことは考えず、目の前の映像を観なさい。
嬉しい誤算としては、生い先短い小生の冒険心も掻き立てられた。
小生は悟りました。人生の儚さ、尊さ、そして愚かさを。
崖登りは体力的にもう難しいため、今年は数年振りに富士山にでも登りたいと思う。
圧倒的スリルを感じられる大変有意義な映画時間でした。
全てに感謝。有難う。