「この高さ、怖さ、生還しようとする人の精神力…それら全てを体感!」FALL フォール 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
この高さ、怖さ、生還しようとする人の精神力…それら全てを体感!
高い所は好き? 苦手?
もし苦手なら、絶対アウト。
好きでも、高所恐怖症になるかもしれない…。
話は超シンプル。
人気の無い荒野にそびえ立つ高さ600m超えの古ぼけたTV塔。
二人の若い女性フリークライマーが挑戦。
何とか頂上に辿り着き、降りようとしたその時…!
唯一の手段である梯子が崩れ落ちてしまう…!
スマホの電波は届かない。助けを呼ぶ事は不可能。
役に立ちそうなものもほとんどナシ。
足場は二人で居る事がやっとのくらいの狭さ。
超絶体絶命、超極限状態、心身共に限界近付く…。
二人の命運は…!?
超シンプルな上に、ほとんどワン・シチュエーション。
序盤の10分~15分を差し引き、残りの尺、これだけで持つのか?…と思いきや、
もうあっという間!
取り残されてからは終始目が離せない。
ずっとハラハラドキドキ、手に汗握りっ放し。
これほど引き込まれ、スリルに満ち溢れた映画も久し振り。
こういうワン・シチュエーションのサバイバル、もしくは高所題材の映画も少なくはないが、中でも突出していると言えよう。
さらには所々の伏線も見事効いている。シンプルなワン・シチュエーションに見えて、なかなか巧く作り込まれている。
とにかくその目が眩むほどの高さ…!
実際に600m超えの高さの所で撮影した訳ではないが(←って言うか、出来るか! まあ、トム・クルーズならやりそうだけど…)、それでもなかなかの高所で撮影したらしい。
にしても、高いって怖い。私の最高経験は、スカイツリー。展望エリアのガラス張りの床に立とうとしたのだが、立てない。本当に足がすくむ…。
絶対落ちる心配のないそれでもドキドキなのに、ましてやこのシチュエーションは…。考えるだけでも…いや、考えたくもないほど。
高さだけではなく、音も。老朽化した梯子が軋む音、ネジが外れる音、轟音のような風音…。
高さも音も臨場感たっぷり。
思えば序盤から、不吉な前兆はあった。車で向かう最中事故に遭いそうになったり、ハゲワシが獲物を突っ付き貪るのを目撃したり…。
これらは何かの警告だったのかもしれない。
さて、この超高所の絶体絶命、どうする…!?
あの手この手を駆使。
双眼鏡で周囲を見ていたら、塔付近に人が。必死に大声を上げたり、靴を落としてみるが、全く気付かない。
電波は届かないが、塔の真下は入る。SNSに現状を投稿して、スマホを靴に入れ、靴下などをクッションにして敷き詰め、落とす。
SNSに投稿された救助メッセージに誰かが気付き、助けが来るのを待つ…のだが、何時間経っても助けは来ない。
十数m下のアンテナに引っ掛かったリュックの中に水やその他が。それを取りに行く。決死の思いで確保。戻ろうとした時、大ピンチに…! 何とか助かったが、実はこの時…。
リュックの中にドローンが。メッセージを書いて、ドローンを人の居る所まで飛ばす。が、到達出来ぬままバッテリー不足。
もう一度やろうにも、バッテリーを充電しなければならない。奇策で、塔てっぺんのランプから充電。充電中、ハゲワシが襲い来る。
もう一度ドローンを飛ばす。あともう少しで人の居る所。が、その時…。
全ての方法や望みが絶たれた。心身共に限界。追い討ちを掛けるかのように、衝撃の事実が発覚する…!
この絶望下に取り残されたのは、ベッキーとハンター。
共にフリークライマーで、親友同士。
ベッキーには高所にトラウマが。
最愛の夫と崖をクライミング中、事故死…。夫を失った悲しみから立ち直れず、父親との仲もぎくしゃく…。
そんな彼女を恐怖に打ち勝つ為と、この塔のチャレンジに誘ったのがハンター。
トラウマ抱える相手を無理矢理誘ったり、チャレンジの一部始終を撮影してSNSに上げようとしたり、今にも崩れそうな梯子を揺さぶったり(デンジャー過ぎるよ、ハンター…)、そもそも塔に登る事自体無許可。
やってる事は傍迷惑。だから最初の内は自業自得と冷めた目で見ていた。
が、次第に二人に感情移入。生還を応援するように。
親友同士。
この絶体絶命極限状況下で、ある事が発覚。
ハンターがベッキーの夫と関係あった事を知ってしまう…。
後悔の念に苛まれるハンター。
普通の状況下なら険悪になるだろう。
が、状況が状況。打ち明けて、本心をさらけ出して。
何としてでも二人でこの状況から生還する。
女二人の友情。グレイス・キャロライン・カリーとヴァージニア・ガードナーが熱演体現。(プラスして、二人共ナイスボディで露出の激しい格好でセクシー)
脆い面があるベッキーと、強い面があるハンター。
二人だからここまでこうして乗り越えてきた。支え合って、励まし合って。
思い返すと、不可解な点もあった。ある夜目を覚ますとハンターが居ない、充電中リュックを落とした時ハンターはそれをキャッチしない、何より常に気丈で怯まないハンター…。
衝撃の事実は夫との関係ではなかった。
実は…
アンテナに引っ掛かったリュックを取りに行ったのはハンター。
あの時危うく落ちそうになるも何とか助かったが、実はそうではなかった。
実はあの時、ハンターは助かっていなかったのだ。落ちてアンテナの上で…。
じゃああれ以来ずっと一緒にいたのは…?
親友を失った恐怖と悲しみを認めたくないベッキーが見ていた幻覚。
ハンターはすでにもう死んでいて、ベッキーはあの時から実はずっと一人だった…!
この衝撃の事実、ここ数年見た映画の中でもゾッとした…。
最悪の状況に陥れて、さらに最悪の事実に叩き落として…。
たった一人。もうとっくに心身共に限界だが、追い討ちを掛けるかの如く…。
もう自分もダメ…。
そうなりそうになった時、幻覚のハンターの声が奮い立たせてくれる。
幻覚であったかもしれないけど、一緒にいた時間と勇気付けてくれた声は本物。
諦めないで。適者生存。ベッキー、あなたならこの恐怖と高所に立ち向かって勝って、生還する事が出来る。
襲い来るハゲワシを逆に捕食。生に執着する人の凄まじい精神力。
梯子が崩れ落ちた時にベッキーは足を負傷。どんどん悪化していくが、それを乗り越えて、最後の最後の賭けに出る。
自分のスマホに救助メッセージを投稿し、もう一度靴に入れて落とす。
さらにこの時、絶対誰かが気付くよう、一緒に落としたのは…。
酷い事かもしれないけど、もうこの方法しかない。
最後の最後の方法と望み。絶対に生還する。
果たしてベッキーは…!?
ラストシーンは、意外な人物の視点から。
人によっては賛否分かれそうで、そのシーンを見たかったとの声もありそうだが、意表を突いたオチは悪くはないと思う。
ほとんどネタバレかもしれないが、何よりやっとのやっとの安堵…。
最近体感型ムービーなんてよく宣伝文句であるが、これほどのものがあるだろうか。
劇場大スクリーンで体感出来なかった事は、怖すぎるから良かったのか、それとも体感出来ず惜しまれるのか。
う~んやはり、後者かな。
高い所は好き? 苦手? 人それぞれだけど。
チョー怖ぇぇけど、ゾクゾク面白かった!
何やら続編の企画があるという。
またベッキーが高所に取り残される…? 幾ら何でもそれは…。
キャストを一新して、別のさらに高所に…?
二番煎じにならないといいけど…。