「勇気と無謀は違います。」FALL フォール レントさんの映画レビュー(感想・評価)
勇気と無謀は違います。
ゼメキスの「ザ・ウォーク」以来の高所サスペンスアクション。出来ればかの作品のように3D上映してほしかった。3Dなら本作で得られる恐怖感は倍増したはず。
ストーリー自体はまんま「ディセント」。設定を地下洞窟から高所に持ってきただけと言えば身もふたもないが、ご丁寧に女同士のどろどろした人間関係までまったく同じなので脚本家は絶対にかの作品を下地にしたのだろう。ただ、本作特有の魅力も充分にあった。
お金目当てに危険なチャレンジ動画を上げ続けるのだろうと、主人公のベッキーは親友のハンターに問いかける。それに対しハンターは答える。一度きりしかない短い人生、その一瞬一瞬を大切にしたい、だからチャレンジし続けるのだと。
恋人をなくしてふさぎ込んでいたベッキーを電波塔クライミングに誘うハンター。勇気を振り絞って人生を前に踏み出せと言わんばかりに。
確かにくすぶった人生から脱却するには勇気ある一歩が必要だ。しかし、今回ハンターが選んだ手段はあまりにも無謀なものだった。
さび付いた電波塔はいつ倒壊してもおかしくない。梯子はあっても慣れ親しんだ岩山とはまた別の危険が伴う。登山のプロなら、登るコースを入念に事前に調査し、いかなる危険にも対処できるよう出来る限りの準備を怠らない。
ハンターの前述の言葉は確かに美しいが、事前準備も何もしない無謀な行為を行うのとでは話が違う。
結局その無謀な行為で命を落とすはめとなるハンターは自身が冗談交じりに述べていた通り落下しながら救援メールの送信をすることとなる。
鑑賞中、どうせ最後には助かるんだろう、どうせ役者さんはセットの上で演じてるだけだろうとわかっていながらも、次から次へと起きる手に汗握るシーンの連続、なんら手立てがない圧倒的絶望感も加わり、かなり精神的に消耗する作品だった。あくまでもいい意味で。
そして単なるシチュエーションスリラーに終わらず、昨今のSNS上での無謀な行為が蔓延している風潮にチクリと警鐘を鳴らした作品。
度々・・。
「ディセント」近々、観賞させて頂きます。(配信にありました。)
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今晩は。
今作は私は、ベッキーとハンターとの間の、微妙な関係性を踏まえて観ると、更に面白き映画だと思いました。
同じ人を愛した二人が、夫々の思惑もありながらも、ハンターは自らを犠牲にしつつベッキーを救おうとした姿。
私は、今作は単なるワンシチュエーションサスペンス映画ではなく、ヒューマンドラマとしても成り立つ映画だと思いました。
個人的には、秀作であると思っています。では。返信は不要ですよ。