「そうするしかなかったんだよね」劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE 御辞儀層さんの映画レビュー(感想・評価)
そうするしかなかったんだよね
常守朱は賢く、一般市民は愚かである。
それでも法で人々を、シビュラを守るためにはどうしたらよいか。
そこで物語の締めに朱はある選択をします。
そうするしかなかったんだよね。
3期に繋がる前日譚として物語は紡がれています。
背景CGの美麗さや拘りが見える肉弾戦、迫力あるBGMや銃火器のリアルな発砲音、
SFメカのかっこよさは相変わらずのPSYCHO-PASSクオリティ。流石です。
いつも美味しいところを掻っ攫う絶対的暴力装置、ドミネーター。
今回も相変わらずのイケメンぶりを発揮し、隠し玉を披露した例のシーンでは
思わず「おおー!やっぱりそれ(機能)あったんだ!」と声に出してしまいました。
シリーズファンはテンション上がること間違いなしです。
しかしながら、これは1期以降目立ち始めましたが、
各キャラ(特に新キャラ)の描写が今一つ…
敵味方問わず何だかあっさりと、事務的に、機械的に別れが訪れます。
例えば今回の敵ボスも己の正義を信じ、理想のために邁進しているようではありましたが、
少なくとも周囲に訴えかけたり、理解を得るための努力をしているような
描写はなかったように思います。そのためか感情移入がし辛い。
敵No.2以下になるとさらに人物像がぼやけてきます。
彼らは一体何のために反抗しているのか。
(チップがと言われればそれまでですが)
ピースブレイカーの設立当初の目的は何となく理解できました。
「わたしたちの世界には、指一本触れさせない」ためにお外で
虐殺の文法を実行していたということですよね。たぶん。
我々一般人は見ようともしないが、シビュラ社会にとっての必要悪だったようです。
そうするしかなかったんだよね。
物語の各所に「そうするしかなかったんだよね」という展開は見て取れますが、
私個人としては、もう少しストーリーに個々の思惑が織りなす複雑さや、
血の通った人の温かみを感じたかったです。
あとこれは完全に言い掛かりですが、
どうも中露に寄せたような情景描写、舞台設定が気になりました。
スポンサーの意向でしょうか。脚本家の趣味でしょうか。