「さくっと観られる終末映画」サイレント・ナイト デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
さくっと観られる終末映画
気が向いたときだけ、ぼちぼちメモしておこうかな。
あまり見てこなかったタイプの映画だったけど、「世にも奇妙な物語」でも観ているみたいに、誰かに感情移入することもなく、この映画のコンセプトを楽しめた。
もうすぐ毒ガスで全滅する運命が分かっている英国が舞台。一つの家に友人家族が何組が集まって、わいわいがやがや、クリスマスの晩餐をする。パーティーの後は、ガスで苦しむ前にピルを使って自害する予定、というストーリー。この家族たちが非常識だったり強欲だったり臆病だったり自己中心的だったり、普通に一長一短というか長より短が目立つ人々で、そこがこの映画にはいいんだなあと思った。ヒロイックにならないところが。
普通の人たちなので、ピルを飲む準備が上手にできなかったり、今さらそんなこともういいじゃないというレベルのケンカをしたりする。だからこそ、最後の最後には、折り合いが悪そうだった母の亡きがらを抱いて死ぬ娘の姿とかに、ちょっとぐっとくるのかな。逆に、自分が死ぬことの怖さで頭がいっぱいのお父さんとかがいるのも真実味がある。
『ジョジョ・ラビット』のジョジョ役のローマン・グリフィン・デイヴィスくん、お芝居めちゃくちゃ上手。この子と双子くん、3人とも監督の息子さんなのだそうな。リリー=ローズ・デップも今回はいい役をもらっている。
ただ、女性同士のカップルの描かれ方はかなり微妙。アレックス(黒人女性)が優しくておおらかだけど軽度の知的障害者みたいに見える。会話における反応という反応が鈍い。おまけに最後はアルコールを摂取し過ぎてピルを吐きもどしてしまい、パートナーの手をわずらわせる。この映画、どのキャラクターのことも突き放したように描いてはいるけど、この二人は特に冷遇されている気がして、そうするぐらいなら登場させないほうがいいよと思った。