「とても良い音質でホイットニー・ヒューストンの歌声を聞けて、それだけで涙が溢れてくるのだが、大きな感動には繋がらない」ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
とても良い音質でホイットニー・ヒューストンの歌声を聞けて、それだけで涙が溢れてくるのだが、大きな感動には繋がらない
ケイシー・レモンズ 監督による2022年製作のアメリカ映画。原題:Whitney Houston: I Wanna Dance with Somebody、配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント。
1992年「ボディガード」は映画館で見てホイットニー・ヒューストンの圧倒的歌唱力に感心させられたが、特に熱心なファンという訳では無い。
しかし何より、とても良い音質で、ホイットニーの歌声を沢山聞けてとても幸せであった。低音から高音まで突き抜ける彼女の唄声の素晴らしさで、涙が溢れてきた。また、ホイットニー演じたナオミ・アッキーの口パクも見事で、歌声ととても良く合っていた。
ホイットニーを見つけ売り出したクライブ・デイビス(スタンリー・トゥッチが好演)の存在の大きさを、始めて知った。調べると彼は、ボブ・ディラン、ジャニス・ジョプリン、サイモン&ガーファンクル、シカゴ、サンタナ、マイルス・デイヴィス等の発掘にも関与したらしい。曲探しに熱心な彼が「ボディガード」主題歌として「オールウェイズ・ラヴ・ユー」(白人ドリー・パートンによるカントリー・ソング)を提案したエピソードも紹介されていた。ボロボロになった彼女を何とか更生させようと努力する姿にも、関心させられた。但し良いヒトすぎる描写は、多少ソニーミュージック最高制作責任者という地位(映画製作者の一人でもある)も影響か?
「ボディガード」出演に気が進まなそうなホイットニーが、相手役がケヴィン・コスナーと聞いて態度を一変して翻す描写が可笑しく、映画館でも爆笑であった。
デイビスとタッグ組んで,人気が沸騰していく様はサクセスストーリーとして興奮させられたが、それだけにクスリに溺れて痩せ細っている姿の描写は悲しい(ナオミ・アッキーは強烈な減量をした!?)。映画でも言及あったがジュディ・ガーランドも自伝的映画も見たがクスリでやられており、米国ショービジネス界の構造的問題が有るのだろうか?また、映画で可愛いホイットニーが愛した娘が、その後、22歳で母と同様な死を迎えたことを知り、更に悲しくなってしまった。
最後、彼女が亡くなるホテルの描写から、かなり突然に全盛期の熱唱シーンに移ったのにはかなり戸惑ってしまった。脚本家アンソニー・マッカーテンが、ボヘミアン・ラプソディと異なり、クスリに負けての死だけに、苦労しただろうことは予想される。とは言え、ホテルバーで3曲連続歌唱が忘れられないとのフアンのマスターとのやり取りはあったものの、もう少し観客に分かりやすい導入映像を挟んで回想映像に入って欲しかった。
監督ケイシー・レモンズ(「ハリエット」等)、製作デニス・オサリバン 、ジェフ・カリジェリ、 アンソニー・マッカーテン 、パット・ヒューストン、 クライブ・デイビス 、ラリー・メステル 、モリー・スミス 、サッド・ラッキンビル 、トレント・ラッキンビル 、マット・ジャクソン 、クリスティーナ・パパジーカ 、マット・サロウェイ。
製作総指揮ナオミ・アッキー 、ケイシー・レモンズ 、ウィリアム・A・イーロン 、マリナ・カッピ 、エリカ・ハンプソン 、ジョシュ・クロック、 レイチェル・スミス 、セス・スペクター 、デニス・カサリ 、ジャニス・ビアード 、タナー・ビアード 、レクシー・ビアード、 マシュー・ギャラガー 、ステラ・メギー 、マッケンジー・オコンネル。
脚本アンソニー・マッカーテン、撮影バリー・アクロイド、美術ジェラルド・サリバン、衣装チャールズ・アントワネット・ジョーンズ、音楽チャンダ・ダンシー、音楽監修モーリーン・クロウ。
出演 ナオミ・アッキー:ホイットニー・ヒューストン、スタンリー・トゥッチ:クライブ・デイビス、アシュトン・サンダース(ムーンライト等)ボビー・ブラウン、タマラ・チュニー:シシー・ヒューストン、ナフェッサ・ウィリアムズ:ロビン・クロフォード、クラーク・ピータース:ジョン・ヒューストン、ブリア・ダニエル・シングル:トンボビー・クリスティーナ。
ホイットニーの伝記ものはいくつか観たことがあるので、大体展開わかりますが、あんなに天が二物も三物も与えたホイットニーですら、不幸な死に方をしてしまうのを知ると、幸せについて、深く考えさせられますよね。