「それでも生き続ける。」The Son 息子 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも生き続ける。
重厚な人間ドラマであるとともに秀逸なサイコスリラーの面も兼ね備えている。前作の「ファーザー」も一種ホラー映画と揶揄されたが、本作を観てこの監督は確信犯だと思った。
まさにイギリス版積み木崩しといえようか。
とにかく情緒不安定の息子ニコラスが離婚した父ピーターの家に来てからの展開は正直サイコスリラー要素が強い。生まれたばかりの弟セオと母から父を奪った新妻ベスとの同居生活はいつニコラスが何かしでかすかと緊張感が一切途切れない。ちなみに終盤の銃声に関しては観客の多くは聞こえる前に身構えしたのではないか。
ただ、やはり本作は人間ドラマの要素がメイン。子育てに正解はないというが、明らかに父ピーターのニコラスに対する接し方に問題はあった。表面的にしか息子を見ておらず息子の心の奥底まで触れようとはしなかった。だからこそ上辺だけ取り繕ってるニコラスの態度を見抜くことができなかった。これは多忙だからでは言い訳にはならないだろう。
ピーターは家庭を一切顧みなかった父を憎みそれをばねにして生きてきた人間。自分の息子も同じ様に強い人間だと思いたかった。フランス人インターンの彼と息子を重ね合わせてもいた。しかしいくら親子であっても人はそれぞれ違う生き物だ。
ピーターは自分は父とは違うと思いながらも、やはりニコラスに対して父と同じ接し方をしてしまった。
この連鎖を彼は止めたかった。何とか息子を自分の手で立ち直らせて自分は父とは違うのだと証明したかった。
しかし、結末は不幸なものとなる。正直、医者が正しかったのか、ピーターたちが間違っていたのかはわからない。ただ、最後の最後で元の三人家族に戻れたことをニコラスが喜んでいたことだけは確かだろう。
息子を救うことが出来ず自責の念に駆られるピーター。その彼にそれでもあなたは生き続ける、セオのためにとベスは言う。絶望の中の一縷の希望。ピーターは二度と同じ過ちを繰り返さないだろう。
こんにちは。お邪魔します。
「サイコスリラー」
本当ですね。実は私、とても怖かったです。
弟のセオを覗き込むニコラスの姿が、
殺すんではないか?
と何度も思いました。
親とこの心のすれ違い、
ピーターは精一杯やったと思います。
レントさん、コメントありがとうございます。
実は『ダンジョン&ドラゴン』でも魔法使いが染谷将太の雰囲気に似ていると感じてしまいました(まだ書いてませんが)。
父ピーターには生きていってもらいたいものです。
ちょっと評価が下がってしまったのは、終盤にローラ・ダーンが登場しなかったためです・・・
たしかに日本語字幕はつけてほしかったですね~時間がたっぷりあったので何とか読んでしまいましたが。
今晩は。
今作は、愚かしき若き私自身の息子への接し方を苦く思い出した作品でした。私が良かれと思いながら息子に掛けた言葉が、息子にとってはプレッシャーになっていた事。そして、心優しき息子はそれに応えようとしながら、心理的負担になっていた事。
それに気づき、私に声を掛けてくれたのは妻でした。
ヘルマンヘッセの哀しき名作「車輪の下」を思い出した作品でもありました。では。