「絶対絶望」The Son 息子 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
絶対絶望
「ファーザー」の監督にヒュー・ジャックマンが主演…躊躇うと事なく鑑賞しました。サービスデーという事もあり、結構混んでいました。
いやはや心にずしっとくる映画でした。「ファーザー」とはまた違う考えさせられる作品でした。
2つの観点から観ることができました。客観的に観るとどうにもやりきれない気持ちになるんですが、実の親だったらという視点で観ると辛い気持ちになるのが不思議でした。
ヒュー・ジャックマン演じる父親は決して悪い父親ではなく、子供のために尽くそうとはしているけれど、とにかく自分を良く見せようとしてしまうがために、色々なものを追い込んでしまう性格上、とにかく息子との会話がタジタジになってしまうところが多く見られました。自分の父親と自分を重ねて後悔したりと、改善の傾向を見せつつもどうにもなりきれない、未熟な父親そのものを体現しているようでした。
息子もまた、とんだドラ息子だなとは思いました。学校に行きたくない、それに理由なんかはいらないと思いますし、それに親は真っ正面から向き合わないといけない場面に直面してしまいます。ただ息子はワガママを通り越して学校に行かなかったり、義母にも冷たい態度を取ったりと険悪なムードを自分から作りに行ってしまうので、そこはこの息子の性格上の問題でもあるなと思いました。甘ったれではあるので、イライラはしましたが、演じたゼン・マクグラスの演技に魅了された結果なのでそこは良い収穫でした。
洗濯機の後ろにある猟銃、ズームアップで映される洗濯機、壁に頭をぶつける様子、虚ろな状態で弟の面倒を見ようとして、フラグビンビン立てて風呂場に行き自殺。これまで自分を傷つける行為は風呂場でやってきていましたが、最後を迎える場所も風呂場。メンタルが本当に弱くて、助けの手を施されてもプツンと切れてしまったがために真っ先に楽になる選択肢を選んでしまったというラスト。自殺で最後を迎えてしまう作品は「ミッドナイトスワン」でもあったのですが、あちらは軽快に死んでしまったのでその重みが感じられなかったのですが、今作はその重みがズシンと感じられました。
最後、息子の幻想を見て項垂れる父親、新たに作った家庭すらも壊してしまいそうな危うい状態に、観ている観客側の自分ですらもハラハラしてしまいました。なんて悲しく寂しい終わり方なんだと。
役者陣の演技力はとにかく素晴らしく、物語の完成度も高かったです。エンタメとして観ると「ファーザー」には敵わず、少し都合の良い場面も見られたのが残念でした。3部作の最終作、一体どうなるんでしょう。ペース的には再来年公開なので首を長くして待ちます。
鑑賞日 3/22
鑑賞時間 12:30〜14:45
座席 H-11