「私的鑑賞映画史上No.1:トッド・フィールド監督×ケイト・ブランシェットに脱帽!!」TAR ター ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
私的鑑賞映画史上No.1:トッド・フィールド監督×ケイト・ブランシェットに脱帽!!
『TAR/ター』は劇場で3回、Blu-rayで1回観ている。
本作は2回以上観る価値がある。
本作はトッド・フィールド監督16年ぶりの新作であり、
アカデミー賞主要6部門にノミネートされながらも無冠に終わっているが、
主人公TARを演じるケイト・ブランシェットの演技はただならぬ迫力があり
彼女自身引退をにおわせたくらい心身を削って演じているのがわかる。
初見ではセリフやストーリーを追うので精一杯で、
正直、映像や音に集中できていなかったと思う。
であるがゆえに、あのシーンはどういう意味だったのか、あの音は?と
疑問が尽きなかった。自分の仮説をもって終わった。
その仮説が正しかったのか、ストーリーを知り、
セリフもだいたいわかった上での2回目の視聴は、
本作を理解する解像度が格段に上がったと思う(回を重ねるごとに気づきが増える)。
本作は主人公TARがかつて指導した若手指揮者が自殺をしたことに端を発し
自殺した両親から告発されてしまうのだが、
どうもTARに対する悪意を持った人物や、TARを利用してのし上がろうと
する人物など、複雑に色んな人の思惑が絡み合っていて、
それがTARを陥れていく物語だ。
TARも権力があるがゆえに、傍若無人な側面もあるが、
ある意味、自分の思いに率直なのだろうと思う。
キャンセル・カルチャーに巻き込まれていくが、
そこで終わらないところがTARの真の強さだとラストでわかる。
ただ、後半のTARの狂いっぷりには圧倒される。
オーケストラでのライブ音源録音シーンはそれが顕著なのだが、
もはや笑えるくらいに気持ちいい狂いっぷり。
そこが魅力でもある。
ラスト近くで、TARの実家で彼女がバーンスタインのビデオテープを観て
涙を流すシーンがあるが、ここで原点回帰したTARの表情が変わるのが
とても印象的だ。険しい表情から悟りの表情に変わるのだ。
そして兄トニーとの会話も心があったかくなった。
(TARはリディア・ターという名前だが、本名はリンダだということもわかる)
ラストは唐突とも思える終わり方だが、
きっとTARの再生の物語であろうと思う。
これは1回目と同じ所見だ。その確認ができた2回目だった。
3回目も4回目も所見は変わらなかった。
本作は説明的なセリフ・字幕は一切ない。
したがい、物語をどう解釈するかは視聴者に委ねられている。
おそらく観終わった人同士が話すと、違う見解や所見が行き交うはずだ。
そこがこの映画の面白さであり、私が沼にハマった所以だと思う。
ちなみにTARのドイツ語でのセリフの字幕もない。英語のみ。
本作を面白いと思うかどうかはその人次第だが、
絶対観て損はないと思う。必ず語れるのは間違いない。
2時間45分なんてあっという間だ。
共感ありがとうございます。
オープニングからクレジットが流れ出し、これは! と度肝を抜かれたのを思い出します。ターはちょっと気の毒だな・・と思いますが目立つ人は叩かれ易いですよね、掌返しをひっくり返せるか? 大谷は自分じゃなくて身内のスキャンダルで良かったですね。
共感ありがとうございました。
この映画のラスト=アジアのどこかでの演奏風景については、あの意味がまだ僕はよくわからなくて、ほかの皆さんのレビューとは真逆の破壊的未来=終わったターの姿と取りました。
正解はないですね(笑)
あと面白かったのはステディの彼女の娘を学校に送っていったときのイジメっ子に凄んだときの台詞
「私はこの子のパパよ」が刺さりました。あはは。
talismanさん、ありがとうございます!私の生涯ベスト1映画です。圧巻の演技とは、本作のケイト・ブランシェットの事を言うのだと深く感じ入りました。冒頭の長回しでのケイト・ブランシェットにグイグイ引き込まれ、沼にハマりました。