劇場公開日 2023年5月12日

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「『ブルー・ジャスミン』のケイトが帰ってきた」TAR ター ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5『ブルー・ジャスミン』のケイトが帰ってきた

2023年12月8日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ケイト・ブランシェットは、『ブルー・ジャスミン』でセレブから真っ逆さまに堕ちていく女性を演じた。本作との女性指揮者リディア・ター役との大きな違いは、ターには自分を偽る嘘がないということだ。
嘘がない。自分にも他人にも極めて厳しい。思い込みとこだわりの究極の完璧主義者。だから頂点に立った。究極の真を追求しすぎた。いつしか自己肯定は他者否定につながり、パワハラ、スキャンダルに発展していく。

嘘があってもよかったのだ。虚栄心に溺れてもよかったはずだ。彼女の鬼気迫る演技は、そう思わせるほどの人としての意地が炸裂していた。音と映像が見事にマッチした空間で、彼女の孤高は際立っていた。

同性愛者のリディアの唯一の癒しは、妻シャロンとその娘との静かな生活。シャロンの控えめな存在感が光る。シャロンを演じたアンナ・ホスはドイツ映画の至宝。「東ベルリンから来た女」、「あの日のように抱きしめて」など秀作の主演に抜擢されている。あのケイト、ルーニーの同性愛を描いた「キャロル」とはまた違った視点で、ふたりのコラボの妙味を味わうことができる。
リディアの字幕のテロップが、すべて男性の口調で出てくるところも効果的だ。

リディアが失意のどん底の中、実家の部屋でバースタインのビデオに涙を流すシーン。
原点に帰る、初心に帰るっていいなあ。素顔のリディアがとても可愛かった。

ジョー