「未来からのメッセージ」TAR ター ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
未来からのメッセージ
Q:姉さん、もしこれがヘテロの白人男性を主人公にしていたらどうだったでせうね?
A:たぶんヘビーではあるけどフツー、だったはず。
それを性的少数者の女性(しかし白人)にしたところにひねりがあって企画として目新しいし、権力もってる人間の暴力性に性別や性志向の差はない、って視点の徹底ぶりは「多様性」ガチ勢の考えた企画という印象。
冒頭からだいぶ長い時間、意図がわからないままただ映像を眺めるしかないシーンが続くので集中力が必要だし、会話で出てきた名前が何個かシーンを跨いで出てきたりするので記憶力も求められるのでつかれる。でもずっとジョーカーが出てるダークナイトみたいに、ケイト・ブランシェットから目が離せない。
しかし早い。早すぎる。人類にはまだ早すぎる。
よくエンタメは時代の半歩先くらいが丁度いいとか言われるけど、その点これは余裕で2歩先くらい先を行っていた。
旧世界の人間としては我が身を振り返ってほんのりと(かつての価値観に迎合して生きてきた)後ろめたさと同時に過渡期を生きるつらみを感じたりもした。冒頭のシーンとかなー、つい気持ちはわかる。ってなるもんなー。。
今このネタをやるんなら、180度逆のオチだったらもっとわかりやすかったんじゃないのかな、と思う。
でもきっと、こちとらそんな半端な覚悟じゃねぇ!って気合の入った人たちが作ってるんでせうね。
だからこれは目先のエンタメに満足しない未来からのメッセージで、今よりも5年、10年寝かした方がもっと良くなるんじゃないのかな。
ちなみに私はエンタメ映画が好きなんですねー(反省の色なし)。
正直、お腹のちょーしが悪く終始ゴロゴロしてたのもあり、割とがまん比べではあった。でも音の鋭敏さや画面の緊張感など、没入度は高いし劇場で見るべき作品なのは間違いない。
ラストは観客に委ねる系エンドかもですが、仮に「サンセット大通り」みたいな意図だとしたら、あれだけではちょっとわかりにくかったかな。。