劇場公開日 2023年5月12日

  • 予告編を見る

「観る側の欲望を反映する映画?」TAR ター 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0観る側の欲望を反映する映画?

2023年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これは何を描いた映画だったのか、よくわからない。いや、色々と描かれているのだが。例えば、キャンセルカルチャーの問題などが描かれている。しかし、キャンセルカルチャーの危険性を伝えようとしている映画で、それが一番の主題かというとそうではない気がする。傲慢なアーティストの実像が描かれているとも言えるが、それが伝えたいことだろうか。同性愛を主題にしているわけでもないし、白人階級の傲慢さを主題にしたのかどうか、それもよくわからない。何が主題であったのか、それは見る側の嗜好でいかようにも変わっていく、そんな映画なのかもしれない。だとしたら、この映画を見るというのは、それは自分自身の鏡を覗くような、そんな行為と言えるのかもしれない。自分が観たものは映画か、それとも自分自身か。
ただ一つ確実なことはケイト・ブランシェットのパフォーマンスはとてつもなく素晴らしいということだ。

杉本穂高