劇場公開日 2023年5月12日

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「現実と幻想のハザマの妙」TAR ター zem_movie_reviewさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現実と幻想のハザマの妙

2023年6月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

トッド・フィールドがケイト・ブランシェットありきで作った脚本ということがよく分かります。彼女以外にリディアは演じられないだろうし想像もできない、ケイトとリディアの区別や境界が不明になる時、作中の現実と夢の世界の区別というか現実に引っ張られる夢、夢から現実に戻る時、狂気と冷静、論理の関係などノンフィクション(フィクションなんですが)とファンタジーの間を感じた時、自分は浮遊感にとらわれたような不思議な感覚になっていました。何より、これはノンフィクションだったっけ?という分かっているのに騙されるような、そして、それを楽しむような作品の作りに脱帽です。
面白かった点
・あらゆる社会問題の無理ない詰め込み。それを拾っていく作業がなかなかに面白いし、それが大小問わずに鍵となっていること。
・何よりケイト・ブランシェットの演技は称賛されるほどに素晴らしいのだが、他の役者も現実じゃないかと錯覚させるほどの出来。
・そして最も素晴らしいのは「音」。オーケストラパートは当然だけれども、会話や生活音だったり「ノイズ」だったりの聞こえ方、活かし方が絶妙で物語の重要なパーツであることに気付くはずです。

残念な点
・編集にはひと工夫欲しかった。場面場面のつなぎ合わせが雑なのかなんのか断絶を感じ、一瞬、話の流れについていけなくなる。
・物語の導入。音が聞こえにくいし、エンドロールを最初に持ってきているのだが字が小さすぎて分からないw

2023年のアカデミー賞はこちらの作品こそ相応しいんじゃない?というのが結論です。

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