「推測し考えながら観ることを求められる」TAR ター moroさんの映画レビュー(感想・評価)
推測し考えながら観ることを求められる
様々に推測し考えながら観ることを求められる作品です。
どんな映画だったと端的に伝えにくい、けれど、圧倒的なケイト・ブランシェットの魅力で非常に印象に残る作品です。
クラシック界の背景を知っているとより理解しやすく楽しめると思いますので、他のレビューにもあるように、事前にパンフレットを購入されることをお勧めします。
指揮者として権威ある立場のター(ケイト・ブランシェット)の栄光と転落が、ターの今の視点で一貫して描かれています。
いろいろな出来事から、人々に尊敬されるような輝かしくみえる側面と、生々しく不快で嫌悪を感じるような側面がみえてきます。
しかし、説明はほとんどなく断片的な情報しかわからない構成なので、観る人にはターの過去もわかりません。
作中で語られる出来事は事実なのか。
観る人はターに感情移入するよりも、傍観者として好奇心を掻き立てられるのではないでしょうか。
ターの視点では愛を交わし合う関係でも、弱い立場からすると自分の立場がどうなるかわからないから好意を断れないと受け取ることもできます。
これを逆手にとって、事実はどうあれ「強要された」と触れ回ることでターを陥れることもできます。
権威ある人はちょっとした振る舞いでも強い影響を与えかねないと、戒めるメッセージもあるように感じられます。
ラストの描写は、底辺に落ちた滑稽な指揮者といいたいのでしょうか。
私は、ターがどんな環境でも音楽を愛し尽くし、オーケストラ指揮者として新たな地を切り拓いていく姿として受け止めます。
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