「TARの墜落と再生、その先は果たして」TAR ター yookieさんの映画レビュー(感想・評価)
TARの墜落と再生、その先は果たして
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公開がもっと早ければ、今年後のアカデミー主演女優賞はケイト・ブランシェットが獲ると信じただろう。彼女が演じていなければ単なるクソ野郎に見えてもおかしくない圧倒的カリスマ指揮者の墜落と再生の兆しを描いた160分。クラシックに満ちた音楽映画かと思いきや全編を通してかなり抑えめのトーンで静けさと不穏さが漂い、時にホラー混じりに描かれるTARの狂人っぷりにドン引きしながら笑ってしまっていた。
鑑賞後いくつかの映画解説を聞いて、台詞・音響・美術セットなど細部に隠された意味を知ることで更に面白く感じた。最後にTARが指揮するオーケストラの演奏する曲が「モンスターハンター」の楽曲であるということも解説動画で知ったのだが、モンハンの設定自体に重ね合わせているのだとしたら、TARの再始動とは、再びのハンティング(狩り)に出ていくのだと思えてならない。開始30秒でいきなりエンドロールが始まる斬新な演出は、物語の始まりがTARの人生の頂点であり、そこから堕ちていくだけの話の始まりだったのだと合点がいく。
それにしてもTARの実在感が半端なかった。今作のケイト・ブランシェットの超人的な演技力は、今年見た邦画で衝撃を受けたTOKYO MER劇場版の鈴木亮平さんの演技がそれに並ぶだろう。
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