「卓越した天才の盛衰」TAR ター ゆうきさんの映画レビュー(感想・評価)
卓越した天才の盛衰
音楽にも詳しくないし158分だし。ちょっと見るのに勇気がいるわぁ、色々と入り込めなかったらどうしよう…と不安半分で挑んだもの。あっという間でした。魅せに魅せられたケイトブランシェットの迫真の演技が強烈すぎました。最高に息苦しくて、どうしようもないくらい追い詰められていく彼女の背中をひたすらに見守り抜いた時間でした。冒頭から音楽の専門性や歴史についてやたらめったら語るシーンが長かったんだけど、それもそれで彼女の超越したエゴイスティックな要素を大風呂敷で描かれるにあたって必要だったわけです。ある音楽家の卓越した才能の頂点と転落。自分自身を尖らせて、戦って、鼓舞しつづけて、才能を煽り続ける人生というのは…辛いだろうなぁ。最終的には「人間性の弱点」を叩かれまくっていく過程を観ながら、それはそれで当然な部分もあるけれど、周りと信頼関係を紡げなかった彼女の孤独性を想像すると悲しかった。どんな状況下においても音楽を続けていく事が彼女にとっては生きること。それだけが救い。
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