「「そんな単純じゃない」」TAR ター Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)
「そんな単純じゃない」
この映画の宣伝につられたのか、主人公のパワハラが自明であるかのような感想を書いている人がいますが、ちゃんと見てもらえばそんなことはないとわかるはずです。
そんな自明なものは何もない世界の話です。
それだけがテーマではないのですが、SNSのなかで起こることやSNSのなかで通る論理にしか興味がない、あるいはそれしか知らない人たちばかりの世界で、芸術や芸術家の占める位置はどんなものだろうかとちょっと考えてしまう映画でした。
車の中で横を見るとずっとスマートフォンをいじってこちらを見ようともしない人物。
その人物をフックアップした主人公の方が、いつのまにかあとに取り残されている。
でも世界はそれだけじゃないだろう!!
と思っていたら、最後の音楽はタイトルが「WORLD」っていうんですね。
もちろん、この音楽の指揮にもまったく手を抜かない彼女。そんな彼女に新局面が開けるといい。
ベルリンフィルのリハーサルをしながら、「そんな単純じゃない、もっと複雑よ」という彼女の言葉は、音楽の解釈のことだけを指しているのではないのでしょう。
ケイト・ブランシェットは座って会話しているだけのシーンでもまったく目を離せない演技をします。
力のない役者と演出家がそれをやるとただの動きのない画になるんですけどね。
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