サントメール ある被告のレビュー・感想・評価
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繊細なテーマを力技で繋げた一作
終わりで全てを説明するような映画で、
法廷劇ってこうなってしまうもんだっけな?
とやや疑問だった
ただ、ラマとロランスの些細な接点が
良かった。あの距離感。
ラマの回想にもこれといって強いシーンがなく
もちろん残っているシーンはあるのだが、
小さなエピソード的なものを置いて欲しかったな……
物語を通して、
ロランスの話かと思いきやラマの話だった
ロランスに惹かれるラマの心情がどう解決されるのか
私も興味を抱いた一人として気になったのだが、
思わぬ力技で締められ、それは勿論論理的ではあるのだが
もう少し違う何かが待っている気がしてしまった
すべての娘と母親へ
母親が重たい。娘に向けられる期待、抑圧、敵意、嫉妬、疲労感、鬱。そんな重圧に苦しんだ娘たちはそういう母親にだけはなりたくないと思う。にもかかわらず自分の中に大嫌いな母親のひと切れを感じて娘は絶望する。もし母親からの重圧を一切感じなかった娘がいたらその人は幸せだ。
マルグリット・デュラスの「ヒロシマ・モナムール」は知らなかったからデュラスの「ラ・マン」を思い出した。フランス領だった頃のベトナムで白人フランス人の少女と中国人男性との愛人関係を描いた小説。
ラマが素っ気ないホテルの部屋で自分のノートブックで見るのはパゾリーニの「王女メディア」の一部。王女メディアは自分が生まれ育った土地の宝である金羊皮を愛する男に渡す。でもその宝を男はないがしろにする。メディアは全てを失う。自分の王女としてのアイデンティティも男からの愛も失いよその土地で孤立し悲しむ。孤独に陥ったメディアは、その夫との繋がりを全部捨てることにした。だから愛する子も殺す。その子ども二人とも息子だったからと私は思った。娘だったらどうだったろう。
インテリのロレンス被告。母親も父親も叔母も母国セネガルもロレンスをもはや受け入れない。希望に胸をふくらませて向かった留学地フランスで自分が見えない存在にされていることにある時気がつく。同棲相手のフランス人白人男性からも大学からも。大学教授の法廷でのことばに私は怒りを覚えた。アフリカ人だから、肌が黒いから、女性だから?なぜウィトゲンシュタインの研究をしてはいけないのか!親たちからは法律を学べと言われていた、なぜ哲学を専攻してはいけないのか!
法廷の中の裁判官や弁護士の大半が女性であることに驚いた。医師も教師もヨーロッパでは女性の職業だ。いつになったら日本もそうなるのか。
疲れた・・・
リアルながら法廷を再現しようという意図・演出で、被告、弁護側・弁護側、裁判官、それぞれの主張や語りが長回しでつながれいるため、かなり根気が要りました。参審員の選出などもあるので・・・でもそこの部分はかなり根気興味深く見入りました。
内容も非常につらくどんよりとしているので、正直集中力が続きません。
終わり頃には意識を失いかけていたのですが、ニーナ・シモンの歌声に救われました。その部分だけ、なんか異様に演出が違っていて、ものすごく吸引力があって・・・もっとこういった演出があっても良かったのになぁなんて思ったり・・・
ちょっと話はずれるけど、ニーナ・シモンのドキュメンタリーとかを見ていたせいで不思議と彼女の過酷なる人生と重なるところを垣間見て、勝手にぐっときていましたが、それも意図があっての演出なのかどうかは分かりません。
非常に真摯で誠実な作品で、敢えて堅く・難しく作られている印象でした。後半のようなソフトに感覚的に響いてくる演出がもっとあったら、見やすかったような気がするのですけど、それでは作家魂が許さないといったところでしょうか─あくまで夢想です。
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