劇場公開日 2023年7月14日

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「リアル法廷劇」サントメール ある被告 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リアル法廷劇

2023年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

法廷モノは映画として人気のコンテンツではあるが、そうしたジャンルムビーの類の娯楽映画ではなく、今までに見たことのない本来“裁判”とは何なのか?までも深く考えさせられ問い詰めている作品だったのに驚き勉強になりました。
なので、上記の様な娯楽作品を見る程度の気持ちで臨んでも置いてけぼりを食うだけで、見る側もそれなりの高い意識・見識がないと追いつけない類の作品だと思います。

例えば、堕胎は罪か否か?という問題が社会にはあり、法律上では犯罪になりますが、様々な“事情”により罪が軽減されたり同情される場合もあります。では、産んでしまったらその“事情”は通用しないのか?
個人にとってはその「様々な個人的事情」こそが法律以上の最も重要事項であって、裁判とはただジャッジメントする機関ではなく、個人的事情を浮き彫りにし、それに至る原因を追究する機関であらねばならないという事を本作を見てよく分かりました。これは全ての犯罪に通じるものだと思います。
罪を犯した者の年齢・人種・生い立ち(環境)・教育・知能・人格・嗜好・資質・地位・経済力等々、様々な個人的要素や外的要素を考察しての審判でなければならないという事であり「嘘か真実か」「正義か悪か」はあくまでも土台であり前提であって、本来それだけで審判出来る者など誰もいないのでしょうね。
そして本作は女性映画であるという事が強調されていて、最近見た『ウーマン・トーキング/私たちの選択』もある意味、女性性を描いた作品であり、本来生命を引き継ぐ役割を担った女性の資質として描かれた作品でありましたが、その女性でもわが子を殺すという事の(現在社会の?)闇も覗かさせられました。(しかし『王女メディア』も引用されていたしなぁ~)

あと、ラスト近くの(女性)弁護士が語る最終弁論は凄く興味深く目から鱗の語りでした。
本作は実話に基づき、台詞もほぼ現実の答弁を引用したモノと思われるのですが、この部分を聞けただけでも本作を見た値打ちはありました。

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シューテツ