ホワイト・ノイズのレビュー・感想・評価
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さぁ、何を信じる?
求めていたまんまの映画だった。アダム・ドライバーの風刺的映画ってめちゃくちゃ面白そうじゃんと思い、Netflixで配信されるまで我慢できず、公開日に鑑賞した訳だが、個人的には大ハマり。ホワイトではなく、ブラックなユーモアがたんまりのアメリカらしい作品です。
何も考えずに見たら、何が言いたいのかさっぱり。しかし、見る視点を少し変えてみればメッセージ性が強く、グイグイ引き込まれる。大気汚染やプラスチックの環境問題、死を恐れ死に近づく人々、隔離された状況、身近に迫る死の壁...。ビックリすることに日本の国旗なんかも出てきちゃう。これほどまでにさりげなく風刺する映画は類を見ない。「ドント・ルック・アップ」のように直接的ではなく、かなり間接的に描く物語。
信じるべきものはなんなのか。
医者の言うこと?先生の言うこと?歴史上の偉大な人物の言うこと?家族や友人の言うことは信じる?この作品は「信じる」ことについて深く掘り下げられており、その先に待つ「死」についてもしっかりと描かれている。観客の心を掴む効果的な演出、不安と恐怖を感じる音、美しいとまで思えるカット割りが非常に秀逸。Netflixらしい素晴らしい作品です。
なんたって、主人公はアダム・ドライバー。
50過ぎの中年太りのおっさんを好演。この人の演技って、ずっと見ていられる。すごく好き。どの俳優の演技が好き?って聞かれたら、5本の指に入るくらい好き。感情の動かし方が本当に上手く、映画の質が上がるだけでなく、観客の気持ちまでも揺さぶらせる。この胡散臭さがたまんないね。
ちと物足りず、ストーリー展開が気持ちよくないのは残念。話はスムーズに進んでいくんだけど、ぶつ切りになっている感は否めない。奥さんと子供たちについても、キャラクター設定が細やかで綺麗に脚本をまとめていれたら、尚良い作品になったかな。
『人は事実という壁に囲まれた弱い生き物』
人は事実を求める。しかし、事実はいつも壁の向こう側。表面だけでは何も分からない。それを知らない人々は、表面に描かれたものが事実だと錯覚する。そんな人間は愚かである。とても弱い生き物である。いつ気付くだろうか。その壁は、自分の目線までしかないということを。
にしても、最高の風刺映画だった。
どうやら、Netflix映画との相性がいいらしい。Netflixで配信されると言っても、こうやって映画館で見るのがいいのよ。この作品も、独特な雰囲気を大スクリーンで味わうのがすごく楽しい。是非とも、劇場で。
【茫漠たる死への恐怖を抱えた夫と妻や家族や、多くの人々の姿をシニカルに描いた作品。カラフルなスーパーマーケットで買い物をする人々の姿も脆弱な”愛、幸せ”を暗喩している作品である。】
ー 章立てで物語は進む。
第一章では、数々の映画での車の衝突シーンが描き出される。物語のストーリー展開が暗喩される。
その後、大学教授のジャック(アダム・ドライバー)と、バベット(グレタ・ガーヴィグ)夫婦と子供たちの一見、幸せな家庭風景が描かれる。
だが、並行して有害な化学物質を積んだトレーラーが、列車に突っ込み大量の化学物質が黒い雲となって、彼らの住む街に近づいてくる。-
◆感想
・バベットは、家族に内緒で、ダイラーという薬を服用している。売っているのは怪しい男である。バベットが効能も良く分からないダイラーを服用していた理由は”茫漠たる死への恐怖”を克服するためである・・。
・有害な化学物質が拡散したため、町を逃げ出す人々の車の列も、何だかシニカルだ。
ー 一瞬で幸せな生活が崩壊する、現代社会の脆弱さを揶揄しているようにも見える。そして、ジャックは有害物質が含まれた雨を二分半、給油中に浴びたことで、医者から検査をされ精神の均衡を徐々に失って行く。-
・そして、ジャックはバベットにダイラーを売っていた男が、妻と情交していた事を知り、男を殺しにモーテルへ出かけ、散乱するダイラーを踏みつけながら、男に発砲する。
ー この辺りは、物凄くブラックシュールである。コメディと言っても良いかもしれない。バベットは薬が欲しい為だけに男に抱かれる。
そして、死んだと思った男は、ジャックに発砲するが、バベットも夫を追ってきていて二人とも負傷。そして、3人とも救急車へ。だが、ジャックとバベットは隣同士で寝かせられる。
<その後、何事もなかったかのように、彼らは日常生活に戻る。そして、日常生活を象徴しているカラフルなスーパーマーケットで買い物をする人たちの姿が、長廻しで映し出される。
今作は、普通の生活をしながらも、茫漠たる死への恐怖を抱えた夫と妻や家族や、多くの人々の姿をシニカルに描いた作品である。>
展開が全く読めず!
胡散臭い人間と世の中だけど生きて行かなきゃしゃーない
なんだか微妙に面白かったのは、お腹が突き出たアダム・ドライバーが居たから。歩き方もそういう人的だった。結婚離婚を繰り返して子どもが4人いるパッチワーク・ファミリー。妻はスタジオでリハビリ指導等の仕事、一方で夫(アダム・ドライバー)はヒトラー研究第一人者だがドイツ語できない。とにかく人の目をひくテーマの専門家になって有名になりたい大学教授連。食品添加物、ノーブランドの製品、馬鹿みたいに巨大なスーパーマーケット。野菜と果物のコーナーは色がきれい。でも選択肢が有りすぎると買う気が失せる。大量生産大量消費、車社会、デマやプロパガンダが飛び交う社会、熱狂の対象を常に探し求めているかのような群集、銃規制とその反対派。資本主義とアメリカの縮図の中で、子どもたちはクールで客観的、未来は子どもの手に。大人は死が怖くて頭の中は妄想でいっぱい、目が血走ってる。そんな大人でもパートナーを愛し子どもたちを守り人を助けることはできる、っていうことかな。
『ドント・ルック・アップ』みたいな話かと思ったら『アメリカン・ビューティー』のようなラストスパートを見せる想定外の人間ドラマ
ヒトラー研究の第一人者であるジャック・グラッドニー教授は近所で起こった列車事故によって流出した化学物質から家族を守ろうと奔走するが、パニック状態の街で父、そして夫としての威厳がグラグラに揺さぶられる話。
前半は微妙にゆったりしたテンポの災害パニックで毒気を若干抜いた『ドント・ルック・バック』みたいな展開ですがそこは物語のツカミに過ぎず、そこから先は『アメリカン・ビューティー』みたいなあらぬ方向に向けて暴走します。『マリッジ・ストーリー』でもガリガリに神経を削られたアダム・ドライバーがここでもボコボコにされますが、こっちではブチ切れてとんでもないことになります。しかし悲壮感がほとんど残らないのは四人の子供達のおかげで、特に長女デニースを演じるラフィー・キャシディの聡明さが印象的。見覚えがあるなと思ったら『トゥモローランド』で謎の少女アテナを演じていました。辛辣な展開を見せるドラマですが全編に漂っているのはすっとぼけたユーモア。特に真面目なキャラを演じることが多いドン・チードルが珍しくユルいキャラを軽妙に演じているのが絶妙にハマっていて意外でした。
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