蟻の王のレビュー・感想・評価
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愛の自由を訴える
はじめて聞いた"教唆罪"という罪があるのか。
因みに映画の題材になったアルド・ブライバンディ氏は実在でブライバンディ氏が劇作家として、また同時に蟻の生態学者でもあったため、大学で教鞭をとりながら、劇作家としても活躍されていたわけだが、エットレという青年と知り合い、次第に二人はお互いの価値観に惹かれ合うようになり最終的には二人でローマでの生活が始まるのだが、二人の関係を良しと思わぬエットレの両親により二人は引き裂かれ、エットレは同性愛を治療するための施設へ強制的に入れられ、電気ショックでの治療が始まったと同時にブライバンディは訴えがキッカケで逮捕されてしまう事態になる。
同性愛が今とは違い社会的に認知されず、またカミングアウトがしたくても出来なかった世の中だから劇中のエットレが悪人がいないのに罪として成立しているのはおかしいと話した際のブライバンディが自分の嗜好が世の中に認めては貰えない諦めを見せながらもエットレのセリフで励まされ、お互いに愛し合っているからこそ同性同士であれど認知して欲しいという事をこの映画では強く物語っている。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 蟻(社会)と詩(芸術)。感動的。泣けた。本作は単なるLGBTQ映画ではなく、もっと政治的な、哲学的な、社会的な、普遍的なものだと思う…願わくばあまねく寛容な未来を。
①記者の姪が訴える「問題なのは(だったかな?)安全圏にいると思っている人達。“明日は我が身と思わない人々。”という台詞が最も印象的だった。
②ブライバンディ教授役のルイジ・ロ・カーショの名演はもとより、記者のエンニオ役のエリオ・ジェルマーノも好演。
③そして何より新人というレオナルド・マルテーゼが演じるエットレが警察の車に乗せられて遠ざかるブライバンディ教授を見送るシーンと表情は『君の名前で僕を呼んで』のラストのティモシー・シャラメのシートと表情に劣らぬ感動をもたらす。
④
風景・ことば・音楽・皆んなのお顔、すべて美しいのに哀しかった。
裁判での台詞回し、メモしておきたかった。明晰な頭脳。
世間の風が変わっても、権力者は変わらない。
そして絶望。
ぼくは胡桃の殻に閉じこめられても,
無限の宇宙の帝王と思っていられる人間だよ
最後の言葉に救われた。
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