蟻の王のレビュー・感想・評価
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無知と世間体と「愛」
自分が弱いからこそ 異質なものを避け、攻撃する
執拗なまでのその行為は、冷静になれば「おぞましい行為だ」と分かるのに・・・
同性愛は病気だとの揺るぎない?価値観からは、どんな仕打ちも自己正当化される
なんら効果も実証されていない虐待そのものの医療行為は
医者達の金儲けのための恰好の餌食であり
世間体を気にする親の、ねじ曲がった愛情でもあり
ちっぽけな正義を振り回したいと願う虐げられた奴らが鬱憤を晴らす行為でもある
そしてこの映画の舞台イタリアだけでなく、世界的にもこの悲しい医療行為が是とされ堂々と行われていた事が嘆かわしい
今でも、蔑む気持ちは心の奥底で蠢いてるに違いない
きっと何かをきっかけにいつでも噴出するのだろう
監督も、それに立ち向かう勇気にエールを送るために作った映画だと述べていたが
このようないじめは「人間が本来備わっている機能による行為」なので「なくすことはでき」ず、「共同体を維持するための正義感」から発していると脳科学では解く
つまり、正義達成欲求や集団からの承認欲求が満たされるという快感が得られるのだという
日本人にはなかなか理解しがたい難解な詩のやりとりは苦痛でしかないが、
徐々に引き込まれていくストーリー
劇作家でもある主人公アルドの意味不明の要求は、
同性愛云々以前に彼を恨む人間も出てくるのではないだろうか
日本が世界に誇る名監督の蜷川氏も、いつも怒鳴っている「怖い人」の印象を受けるが、芸術家の陥りやすい実態なのかも知れない
エットレの兄も、実はアルドを愛しながらも、飽きられ拒絶されたことで、嫉妬と世間体から謀反行為に及んだのではないのだろうか
愛が憎しみに変わった??
あるいは狂気の沙汰に思えるアルドの言動から嫌気がさしたのか?
教師と生徒--禁断の恋にも思えるが、相手は既に大学生
純愛にも思えるのは私だけだろうか
仮釈放されたアルドとキスもせずに抱き合うエットレ
この二人の姿に性を超越した真実の愛を垣間見た気がする
エットレの両親と対照的なアルドの母親の理解ある対応にホッとする
そして正視眼の新聞記者エンニオの存在も心洗われる
嘘しか報道しない現代日本のOldメディアに爪の垢を煎じて飲ませたい
そして彼を支援する正義の団体にも拍手を送りたい
この監督の他の作品を、今後探して観ようと思った
愛の自由を訴える
はじめて聞いた"教唆罪"という罪があるのか。
因みに映画の題材になったアルド・ブライバンディ氏は実在でブライバンディ氏が劇作家として、また同時に蟻の生態学者でもあったため、大学で教鞭をとりながら、劇作家としても活躍されていたわけだが、エットレという青年と知り合い、次第に二人はお互いの価値観に惹かれ合うようになり最終的には二人でローマでの生活が始まるのだが、二人の関係を良しと思わぬエットレの両親により二人は引き裂かれ、エットレは同性愛を治療するための施設へ強制的に入れられ、電気ショックでの治療が始まったと同時にブライバンディは訴えがキッカケで逮捕されてしまう事態になる。
同性愛が今とは違い社会的に認知されず、またカミングアウトがしたくても出来なかった世の中だから劇中のエットレが悪人がいないのに罪として成立しているのはおかしいと話した際のブライバンディが自分の嗜好が世の中に認めては貰えない諦めを見せながらもエットレのセリフで励まされ、お互いに愛し合っているからこそ同性同士であれど認知して欲しいという事をこの映画では強く物語っている。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 蟻(社会)と詩(芸術)。感動的。泣けた。本作は単なるLGBTQ映画ではなく、もっと政治的な、哲学的な、社会的な、普遍的なものだと思う…願わくばあまねく寛容な未来を。
①記者の姪が訴える「問題なのは(だったかな?)安全圏にいると思っている人達。“明日は我が身と思わない人々。”という台詞が最も印象的だった。
②ブライバンディ教授役のルイジ・ロ・カーショの名演はもとより、記者のエンニオ役のエリオ・ジェルマーノも好演。
③そして何より新人というレオナルド・マルテーゼが演じるエットレが警察の車に乗せられて遠ざかるブライバンディ教授を見送るシーンと表情は『君の名前で僕を呼んで』のラストのティモシー・シャラメのシートと表情に劣らぬ感動をもたらす。
④
風景・ことば・音楽・皆んなのお顔、すべて美しいのに哀しかった。
裁判での台詞回し、メモしておきたかった。明晰な頭脳。
世間の風が変わっても、権力者は変わらない。
そして絶望。
ぼくは胡桃の殻に閉じこめられても,
無限の宇宙の帝王と思っていられる人間だよ
最後の言葉に救われた。
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