蟻の王のレビュー・感想・評価
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病気扱いをする狂気
同性愛が認められない1968年にアルド・ブライバンティは、同性愛を罰する罪がなかったため、若者をそそのかしたという、「教唆」の罪で初めて逮捕され裁判となった。
この実際に起こった「ブライバンティ事件」を描いた作品。
たかだか60年ほど前まで、欧米では同性愛が精神病とみなされ、治療の対象だった。
たまたま恋愛の対象が同性だっただけなのに、病気扱い。
脳に電気ショックを与えて精神を破壊させてしまう。
なんて残酷な仕打ち…
現代は性的嗜好に関しては、やっと容認されてきたってところ。
もっともっと寛容な世界になりますように。
異質な者をを排斥してしまう人の心が変わりますように。
余韻の残る哀しいラストに、そう願わずにはいられなかったです。
心掴まれた
本当の愛とは何だろう?
美しいイタリアの風景や街並み、温かみのある優しい光に包まれたシーンとは対照的に、物事や正義の捉え方の違い、差別、偏見から生じる悲劇を描いた作品。本当の愛とは何かを深く考えさせられた。
エットレ役のレオナルド・マルターゼ(ジュード・ロウ似のイケメン!)は本作が映画デビューとの事だが、目で心の機微を語る演技が本当に素晴らしく、圧巻のラストシーンに涙した。
これは純愛
学者なのにまるで毒婦のような言われようのアルドと、子犬みたいな純粋な目をした美しいエットレの恋物語。
これは純愛なのでは?
ラストシーンが目に焼き付いて離れない。
1960年の伊で同性愛がどのように扱われたかを描かれているけど、私はエットレのアルドを慕う純真さにやられてしまった。
イタリアの風景も美しくて、アルドの作った塔もまた雰囲気があってよかった。門がね!門がいいよ、門が!
以下、アフタートークからの学び↓
これは実際に起こった事件を元に作られているとのことだけど、本場のイタリア人もアルドの事件を知っている人は少ないそう。
ネタバレになるから言えないけど、エットレに起こった恐ろしいことは、その後は無くなったのだとか。それでもこのイタリアファシズム時代に決められた条例とかでまだ残っていることがあるようで、この話のように存在しない罪に問われる人もいるらしい。
実際には二人は二度と会わなかったと聞いて、ラストシーンの美しさがまた心に沁みた。一言で言えば、もうゆるしてあげて、と思った。
心震わす愛の尊さを繊細に描く映画
イタリア映画祭の特別上映で見た。未知の歴史の一齣を読むようなものかと思っていたが、繊細で心が振るわせられる映画だった。同性愛に不寛容だった1960年代のイタリア社会で実際に起こった事件をもとにしていて、当時の前衛演劇やローマの同性愛者たちのパーティーの描写もあるが、主人公の実在の詩人とそれに関わった人々の感情が細やかに描かれている。当時の社会の厳しさも容赦なく描かれるが、人物の描き方に性別を問わず人を愛することの尊さが感じられる。この映画は全国で上映されればよいのだが。
昨年末にノーベル賞受賞作家アニー・エルノーが中絶が禁じられていた60年代のフランスを書いた原作に基づく「あのこと」を見ていたので、60年代を考えるインスピレーションがまた、得られた。
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