劇場公開日 2023年11月10日

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「蟻の第二の胃は他の蟻を生かすため🐜蟻が群れるのは1匹で居ると迷うから」蟻の王 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5蟻の第二の胃は他の蟻を生かすため🐜蟻が群れるのは1匹で居ると迷うから

2023年11月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

知的

有名で素晴らしい芸術家だから、天才だから(パゾリーニやヴィスコンティを想起してしまう)、或いは「普通の」「私達」を笑わせてくれる頭のいい「お笑い」の人だから(日本のTVでよく見かける)、という理由でもなければ昔も現在も認められず「存在しない」とされるのが同性を愛する人達だ。この映画を見て、組合運動が盛んで共産党が活躍していたイタリアで、同じ党員なのに仲間を助けようとしない保守的で付和雷同の世間と馬鹿げた法廷場面に少なからずショックを受けた。

戦時中のレジスタンス活動がアルドの減刑の理由で、「法」という名の権威は二人の人間を苦しめた本当の理由に蓋をした。背景にあるのはホモソーシャル・ホモフォビア社会、カトリック信仰、そしてエビデンスなき「治療」という変てこな医学の存在だろう。

「法」の名称は異なるが、ドイツでも60年代に男性の同性愛を犯罪とする法律があった(映画「大いなる自由」で初めて知った)。そういった明らかな過去があるから西欧では批判と反省ができるんだろう。そして同性婚も異性婚も全く同じ婚姻とする社会にすることができるんだろう、偏見と差別は消えないにせよ。禁止も罰則も刑罰もなく犯罪ですらなかった日本には反省の機会すらない。別姓婚ですら実現していない。偏見と差別だけはのさばらさせたままで。

エットレ役の男の子が輝いていた。親から離れて自分の道を歩み出す、まさにその年頃にエットレはアルドに出会った。アルドはニーチェやソクラテスやシェークスピアなど過去の哲学や文学の大物を引用して話すことが多い。当時においてそういう方向性のインテリはどうなんだろう?と思った。大文字の文学史・哲学史側にいるインテリで、ちょっと胡散臭いような、知識に飢えている若者を眩惑させてしまうタイプのような気がした。アルドはエットレに震えるほど繊細に接しているのに。

それでもこの映画の登場人物、誰一人として欠けてはならない存在感があり、セリフの一つ一つが心に沁みた。共産党機関紙「ウニタ」の記者エンニオがアルドとエットレを理解し彼等の側に立って記事を書くに至る経緯とエンニオの理性には説得力があった。

人物の顔のアップが多い中で、遠景で街や自然の情景が挟み込まれいてそれがとても生きていた。映像と脚本とキャスティング、そして、イタリアにこのような過去があったことを美しい映像とともに掘り起こしたアメリオ監督に感謝の気持ちを抱いた。

おまけ
記者エンニオ役を演じたのはエリオ・ジェルマーノなのかー!びっくり!この映画のジェルマーノは勇気と正義と理性の記者だった。そのジェルマーノが2024年5月のイタリア映画祭の「信頼」のあの主役とは!(トニ・セルヴィッロとエドアルド・レオと、あと数名の濃い顔除いて)イタリア人俳優をまだよく見分けられない!ちょっと痩せたり太ったり、あるいは髭のあるなしやヘアスタイル、時代背景にあった服やその人物の職業やタイプで鮮やかに演じ分ける!なんと素晴らしい!

talisman
NOBUさんのコメント
2024年5月24日

今晩は
 コメント有難うございました。
 映画のテーマで、同性愛を扱った作品は多いですが私は殆どの作品が好きですね。何故だろう。では、又。

NOBU
ひろちゃんのカレシさんのコメント
2023年11月13日

コメントありがとうございました
印象が薄まらないうちにと帰路車中スマホで一気に書いたので舌足らずの文章で恐縮です。
共産党については,まああれが正体なのでしょう,と苦笑するしかないですね。
もうひとつ,ラストはとても印象的でしたが,あそこに登場するヴェルディのオペラとサッカーによって象徴されるのははまったくステロタイプのあいも変わらぬイタリアで,そこに取り残される無力なエットレを案じずにはいられませんでした(私はオペラもサッカーも大好きです,念の為)。

ひろちゃんのカレシ