「ニュー・キャプテンの事は応援してるんですけどね…」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド モアイさんの映画レビュー(感想・評価)
ニュー・キャプテンの事は応援してるんですけどね…
私はMCUの中でなら、配信ドラマではありますが「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」(21年)が好きです。なのでニュー・キャプテンの事も応援しています。ただ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」から4年も待ってようやく公開されたニュー・キャプテンの新作だと思うと、いいなぁと思った部分もあったものの物足りなさを感じてしまいました。
誠実で生真面目な性格はニュー・キャプテンであるサム・ウィルソンの良いところです。悲劇の先輩ヒーロー:イザイアを慕う姿や後輩のホアキンに色々アドバイスする姿は、かつてのスティーブ・ロジャースとサム・ウィルソンとの関係を思わせ、それもこのニュー・キャプテンの魅力の一つなのです。なのでシリーズの一キャラクターとしてはとても好ましいですし、私も好きです。ですが、この誠実で生真面目な性格はサムがキャプテンを継いだ事によりより増強され、それ故に作品自体がとても地味で大人しい印象になってしまっています。
『自分がキャプテン・アメリカでいいのだろうか?』というサムの葛藤は、もうそれ自体がサムのキャラクターを形成する一要素となっていますが、このテーマはそれこそ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」でやった事なので、本作でもほぼそのまま繰り返されたところで、長期連載漫画の引き延ばしの様に感じてしまいます。葛藤を引きずるにしても作品ごとに新鮮味を感じられる異なるアプローチでの描き方が欲しいところです。
そして誠実で生真面目なのは先代のスティーブ・ロジャースも一緒なのですが、彼の場合はペギーやバッキーとの悲劇的な関係によるドラマが観客の興味を大いに惹き付けたのです。
サムの周りにはそこまで観客の興味を惹き付ける関係を持ったキャラクターが残念ながら今のところおりません。スティーブ・ロジャースを失った喪失感を共有する仲であるバッキーがいるっちゃぁいる訳ですが、しかしバッキーとサムの関係性は既に完成されており、本作でもチラ見せ程度の登場でしたが、それはいまや観客に癒しを与えてくれるポジションにスッポリ納まって定着しているのです。この関係性を物語を盛り上げる為にほじくり返していくような強引な真似は、流石に今のMCUでもやらないでしょう……やらないよね?
またスティーブ・ロジャースには色々な面で対をなすトニー・スタークという存在がおり、この二人が「~エンドゲーム」(19年)までのシリーズを牽引する両輪となり、シリーズを通しての大きな軸となっていたので、サムにもそういう存在が欲しいのです。
スティーブからキャプテンを受け継いだサムとトニーの英才教育を受けたMCU版スパイダーマンがこれからのシリーズの両輪となり、軸になるのだと思っていた時期が私にもあったのですが、なんとスパイダーマンの方は「~ノー・ウェイ・ホーム」(21年)で薄っすら退場してしまいましたので、じゃあトニーの意志は誰が受け継ぐんだよ?という感じなのです。
そして結局MCUの現状がいまいちパッとしないのは、このシリーズを牽引し軸となるキャラクターの不在が原因だと思うのです。大きな連続したドラマを見せられるキャラクターが不在のまま、ヒーローの数だけが むやみやたら と増えていき、トッ散らかったままなのです。シャン・チーとかエターナルズって今後出てくるの?って状態なのに、これから更にXメンやファンタスティック・フォーだとかの大所帯が加わるのならいよいよ混迷を極める事となります。
そしてそれだけのヒーローが束になって対処する必要がありそうな脅威(ヴィラン)の影も未だに見えてこない訳で、個人的には本作で描かれた脅威も、このシリーズの世界の軍や警察組織ならギリギリ対処できそうな印象を抱いてしまったため、物語の中の世界が何故それほどまでにキャプテンやアベンジャーズを必要とするのか?このシリーズの世界が現在抱いている危機とはどういうものなのか?がちょっと理解できないのです。
色々な事情で何かと計画通りにいっていない苦労は察しますが、流石にもう「~エンドゲーム」から6年も経つのですから、もうちょっとシリーズの方向性ってヤツを示して欲しいのです。
あとこれは別にいいっちゃいいのですが、何故この映画の中の日本はこんなに強いのでしょうか?アメリカとの交渉を一方的に打ち切ってインド洋まではるばる資源を奪還するため艦隊を送り込むという、あまりに現実の日本とは乖離した「専守防衛〇ソ喰らえ!」の姿勢にシビれる!というよりシラけてしまった訳ですが、これって度重なる領空・領海侵犯に対して遺憾の意を表しているのが意外と諸外国をビビらせていたって事なんですかね?まぁそれこそ別の宇宙の日本の姿だと言われればそれまでなのですが…。
また観賞後に知ったのですが、なんでも本作がハリソン・フォードの俳優業引退作品との事で……本当にコレで引退するんですか?
ハリソン・フォードが本作で敵役(言うほど悪い人という感じもなかったのですが)を演じた事は「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」(14年)でロバート・レッドフォードが敵役だった事と重なってなかなかにくいキャスティングですし、私はレッド・ハルクってブルース・バナーが何らかの理由で赤くなって暴走するのだと思っていたのでハリソン・フォードが変身した時は吹き出しました。しかしキャリアの最後にこの挑戦的な姿勢を示したのは流石です。ただやはりハン・ソロやインディアナ・ジョーンズ、リック・デッカード!と映画少年たちの憧れだった人の最後の役が人から引き継いだものだというのは少し寂しいのです。なのでシレッと復帰してくれる事をほんのちょっと今も期待しています…。
最後に本作で見られる武力行使を極力避けようとする「対話」の姿勢。この従来のアメリカ映画(特に娯楽大作)が発信していた価値観とは少し異なる感じ。
これは本作に限らず、MCUとは無関係の他の映画からも最近ちょくちょく感じさせられる事が増えてきました。従来のアメリカ映画でしたら、敵対勢力や異文化・異種族と対峙したら力こそ正義!撃たれる前に撃て!で問答無用の武力行使が常套って感じで、娯楽として割り切って楽しんでいる一方で現実でのアメリカのやり方を見ては辟易する事も多かった訳です。なのでそれに比べるとずいぶん理知的になったなぁ~と感じます。
この現象が現在のアメリカ人の自然な心境の変化の表れなのか、ハリウッドのインテリ層が映画を通して新しい価値観を啓蒙するぞ!という、ある種従来どおりの傲慢な意気込みの表れなのかはよくわかりませんが、このアメリカ映画が提唱する新しい価値観が我々映画ファンにどのようなブレイブ・ニュー・ワールドをもたらすのか?その事も含めて今後もシリーズ作品を注視していこうと思うのです。
共感ありがとうございました。
この作品の主役は完全にハリソンでしたね😅… 存在感、スゴすぎましたw
海外にいると、自国の政治に満足してる人はほぼ見たことありません。日本の投票率が低いのは、それなりに満足してるからのような気がしますが。😰
こんにちは
配信で今日観ました。
モアイさんは本当にアメコミに詳しいですね。
私はクリス・エヴァンスが好きでした。
サム・ウィルソンでしたか?私も地味で真面目な感じだと
思いました。
やはりハリソンですね。年取っても金ですね。
平岳大も渋くてよかったです。