劇場公開日 2022年11月18日

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「福本清三を思い出した」宮松と山下 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5福本清三を思い出した

2025年2月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 「5万回斬られた男」の異名を持つ故福本清三。斬られ役専門の俳優として活躍し、『ラストサムライ』ではトム・クルーズからも誘いがあったほどの俳優。もしかしたらリスペクトを込めて彼のイメージで作られたキャラだったのかと思ったほど・・・未見の『太秦ライムライト』も観たくなった。

 どことなく北欧映画のような雰囲気の中、短いシーンの連続で時代劇を中心としたエキストラ俳優の映像が繋げられている。自分の人生ではない一瞬を演じきる宮松(香川照之)。撮影という虚構でありながらも休憩にはいるなど現実シーンとリンクしていて、しかも現実と思わせておきながらも撮影の一部だったというフェイクの連続でした。この虚構と現実の繰り返しが宮松=山下の人生そのものだったんじゃないかと思わせる巧妙さにまいった。

 ところが、記憶を無くしていた宮松にも現実に帰る転機が訪れる。元タクシー仲間であった谷(尾美)の訪問。そして妹の藍(中越典子)との再会だ。さらには元同僚であった健一郎(津田)と藍が結婚したという。記憶を少しずつ取り戻しながらも実家(アパート含む)に帰ることを拒み、名も無い役者への道へと戻ることの選択。色々と想像すると感慨深い内容だった。

 父親の時計をずっとはめていたこと。几帳面な性格や野球の腕だけは現在も過去も変わらない。変化があったのは妹・藍への態度だけだ。妹じゃなく一人の女として見ていたこと・・・彼女への思いを断ち切ることとか、人生を変える、もしくは自分ではない人生を演じ続ける意味でも宮松の今後は想像に容易い。

 そもそも「宮松」ってどこからつけた名前だ?などと思ってもみたが、藍とは母親が違うのだから実母の旧姓だった可能性もあるなぁ。

kossy