「過去のない男」宮松と山下 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
過去のない男
過去のある出来事によって記憶を失った男が、日々、エキストラとして斬られ役を演じる。冒頭の時代劇シーンはまだわかるが、次の焼き鳥屋のシーンから、現実なのか劇中劇なのか、見境がつかなくなって、見ている方が不安になる。これまでの日本映画ではなかったようなトリッキーな作品。
セリフは必要最小限、役者は無表情、カメラは固定と、初期のカウリスマキ作品のような味わいと言うべきか。
中盤から、男の過去が少しづつ明らかにされ、妹(腹違い?)との秘密がほのめかされるが、そのあたりの種明かし的な展開は、序盤の緊張感と比べると、トーンダウンした感じ。殺されても、また生き返る、それを繰り返すこの男の人生とは何なんだ?の一本槍を通した方が面白かった気がする。
香川照之は、タバコを吸う長回しでの表情が秀逸。野波麻帆には騙された。
それにしても、3人のクリエイターの共同脚本・演出とのことだが、3人で一体どうやって物事を決めていったのかが気になるところ。
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