劇場公開日 2022年10月8日

  • 予告編を見る

「『はりぼて』より監督の作家性がグッと前に出たとぼけた演出に鋭い風刺を滲ませる笑いながらドンヨリする作品」裸のムラ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『はりぼて』より監督の作家性がグッと前に出たとぼけた演出に鋭い風刺を滲ませる笑いながらドンヨリする作品

2022年10月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

石川テレビで放送された2つのドキュメンタリー番組『裸のムラ』と『日本国男村』を基にして制作された作品。27年に渡る長期県政を牛耳った谷本前石川県知事の退陣と県知事選を軸に車で移動しながら生活するバンライファーの2家族とムスリムの家族の日常生活を見つめる作品。五百旗頭監督の前作『はりぼて』と同じく、とぼけた劇伴と茶目っ気たっぷりの編集で観客の苦笑を誘いますがさまざまな語り口が炙り出すのは多様性を頑なに拒むムラ社会の実態。周囲の偏見と何とか折り合いをつけようとするムスリムの家族の中にあるのも一見自由気ままに見えるバンライフにも暗い影を落とすのは多様性に背を向けたあからさまな男性優位。不寛容の連鎖にドンヨリさせられますがそこに灯りをともすのが歯に絹着せぬ発言も臆さない一方で誰よりもきっちり社会に貢献しているムスリム女性であることにほのかな希望と進むべき未来が見えます。

何気に本作はオールスタームービーで、故安倍元首相、菅前首相、森元首相、小泉元環境大臣らが次から次に登場して迷セリフを残していくのも印象的。石川県政の歴史を時間を遡りながら紹介する語り口も斬新で、『はりぼて』よりも五百旗頭監督の作家性がグッと前に出た作品でした。

よね