「心の傷は克服するものではない」とべない風船 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
心の傷は克服するものではない
まさか東出昌大に泣かされてしまうとは。セリフが少ないのが功を奏したのか、一皮むけて背中で演じることができるようになったのかわからないが、三浦透子の自然な演技に呼応したかのように陰鬱な気を発する東出昌大が佇んでいる。
父が娘である凛子を出迎えているのに、凛子は初めて島を訪れたみたいなことを言う。「あれ、どうして」と違和感を感じるが、この違和感が物語への興味に変わっていく。
凛子と憲二それぞれの心に負った傷の深さには大小があるが、この2人が恋に落ちて再び進み始める、などという安直なストーリーではなく、ゆっくりと時間をかけて立ち直っていく様が描かれている。
時には傷が抉られるようなぶつかりあいもあるし、島の人との触れ合いで傷の痛みを忘れる時もある。心の傷は、消えることはない。克服することでもなく、忘れることでもない。傷を思い出として歩むことが、生きる道なのかもしれない。ラストの場面を見てそう感じた。
東出昌大様
さんざん失礼なことを書きましたが、貴殿の演技で感動したのは紛れもない事実です。これからの作品が楽しみです。これも、上から目線なようで、ごめんさい。
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