「「警官は黒にも白にもなってはならない」。見終わってからも胸に残る映画」警官の血 angreenさんの映画レビュー(感想・評価)
「警官は黒にも白にもなってはならない」。見終わってからも胸に残る映画
警官の正義のためにはどんな悪事にも手を染める汚職/敏腕警官パク・ガンユンを、純真で真面目でバカ正直な若者チェ・ミンジェが内偵していく、緊張感あふれるドラマ。
エピソード等々どこか日本ぽいなと思ったら、原作は2007年発表の日本の小説だった。日本の警察の裏金問題は折に触れ表面化するので、佐々木譲のこの小説もそこらに材を取っているのだろう。
麻薬取引のような犯罪を取り締まるには裏社会に精通していることが必須で、そのためには情報が必要で、そのためには金がいる。情報のみならず自分のために裏の人間が動くことも必要だ。ゆえに、金の力だけではなく裏の人間をうならせるレベルの「人たらし」な魅力があることが望ましい。
最初パク・ガンユンにはそこまでの魅力があるように見えなくて、説得力が少ないと感じた。けれど、だんだんと見え方が変わっていった。カジノで豪快に大量のチップを引き寄せる姿、競艇で本気で「3番」を応援する姿、班の仲間たちの中で一人だけバカでかい器で酒を飲み干す姿。
極めつけは、邪魔されて怒り電動刃物でチェ・ミンジェを切りつける迫力。いやいや、あの「珈琲」を飲んじゃったところも。なんだか惜しいのは北野武ならあと1.5秒は長くパク・ガンユン(チョ・ジヌン)の顔にカメラをとどめイミシンな空気を味合わせてくれたろうに、あっさりとストーリー展開してしまうところだ。ただ、それは長所でもある。と考えなおした。
主題はあくまでも、黒にも白にもならずに警官としての職務をまっとうする人間の姿であり、ある程度一般人にも共通性がある部分であり、社会とは何か、というテーマに繋がっているのだから。
ラストは、それまでの重さに比べて随分と軽やかで拍子抜けした。そのおかげでエンタメとして楽しめが。
ラストのパク・ガンユンが「成長」したチェ・ミンジェに対して見せた表情は素晴らしかった。あれだけ複雑な顔はなかなかできないと、思われる。実際、とてもとても複雑な心境のはずだから。あの顔が黒白グレーにおさまらない、微妙な色彩でドラマを締めてくれた。